プレスリリース
日本企業の「台湾進出」動向調査(2024年)
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台湾情勢の緊迫化を受け、いわゆる「台湾有事」への対応が日本企業に迫られている。中国が今月、台湾周辺で異例の大規模軍事演習を実施したことで深刻さが一層増大しており、台湾周辺でビジネスを展開する企業に少なくない影響を及ぼす可能性がある。特に、中国・台湾両国は主要な日本企業が数多く進出しており、経済安保の観点からも、中国と台湾の衝突による事業継続計画(BCP)の策定が喫緊の課題となる。
株式会社帝国データバンクは、2024年7月時点における日本企業の台湾進出状況について分析を行った。
<調査結果(要旨)>
- 日本企業の台湾進出、2024年は2988社 2年前から136社・4.4%減- 製造業が1千社超で最多も、2年で約5%減少 「半導体製造装置」は社数増加- 「台北都市圏」が最多、約1400社が進出 桃園・台中・高雄など広範囲に広がる- 台湾進出企業の想定リスク「戦争・テロ」は2割未満 台湾有事の備え課題に
本調査は、帝国データバンクが保有する企業概要データベース「COSMOS2」(2024年7月時点、約147万社収録)及び信用調査報告書ファイル「CCR」(約200万社収録)、各社の公開情報などを基に、台湾(中華民国)に対して現地法人や関係会社・関連会社の設立及び出資、駐在所・事務所の設置などを通じて進出する日本企業を対象に集計を行った。
日本企業の台湾進出、2024年は2988社 2年前から136社・4.4%減
中華民国(以下「台湾」)に進出する日本企業は、2024年7月時点で2988社判明した。3千社を超える水準だった2022年(3124社)に比べ、2年間で136社・4.4%の減少となった。同期間で進出社数が増加した対中国の動向(2022年:1万2706社→2024年:1万3034社、328社増)とは相対する動きとなった。このうち、台湾・中国双方に進出する企業は1514社にのぼり、22年比で37社・2.4%減少した。台湾に拠点を有する企業の半数が中国にも進出していたほか、減少幅は台湾進出企業全体に比べて小幅にとどまった。
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台湾への進出は中国大陸進出の足掛かりとするケースが多く、台湾・中国を一体化した市場として進出する企業は少なくないとみられる。足元では、中国経済の減速に伴う景況感の悪化、製造業を中心とした「脱中国」の動きも進むなか、特に中国市場へのアクセスを前提に台湾へ進出した、または進出を検討していた企業では、計画の凍結や見直しなど変化が生じた可能性がある。
製造業が1千社超で最多も、2年で約5%減少 「半導体製造装置」は社数増加
業種別(日本国内の事業内容に基づく)でみると、最も多いのは「製造業」の1156社で、全体の約4割を占めた。2年前(1224社)に比べると68社・5.6%減少した。製造業で最も多い業種はエッチングや洗浄機器など「半導体製造装置製造」の40社で、製造業全体の約3%を占めたほか、2年前から進出社数が増加した。
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次いで「卸売業」は877社・29.4%で続き、製造・卸売の2業種で全体の7割を占めた。「卸売業」では、工業用の電気機械器具卸売といった業種のほか、工業用化学薬品、食品など、取り扱い品目は広範囲に及んだ。「小売業」(373社)は、日本食人気を背景にラーメンをはじめとした中華・東洋料理店(28社)や居酒屋(11社)といった業態で進出がみられたほか、中国向けも視野に入れたネット通販サービスなど通信販売(13社)が多かった。このほか、「金融・保険業」は159社(2022年:161社)が進出し、2年前に比べて減少したものの、中国事業の円滑化・拡大を目的に、台湾企業や台湾現地法人・子会社を経由して対中投資を行う持ち株会社などの形態で進出がみられた。
「台北都市圏」が最多、約1400社が進出 桃園・台中・高雄など広範囲に広がる
台湾における具体的な進出地をみると、最も多いのは台北市(Taipei)・新北市(New Taipei)・基隆市(Keelung)の3直轄市で構成される「台北都市圏」で、1397社が判明した。台北市を中心に、製造業や商社など卸売業の現地法人、駐在所などのオフィス展開が目立ち、製造拠点としての進出は多くみられなかった。次いで多い「桃園市(Taoyuan)」(143社)は、製造業の進出が約7割を占め、自動車産業のほか半導体、エレクトロニクス部品などの企業で多く進出が見られた。「台中市(Taichung)」(132社)、「高雄市(Kaohsiung)」(131社)なども、製造業の占める割合が5割を超えた。日本企業の台湾進出は、総じて台北市を中心に台湾海峡に面した都市部に集中し、中央山脈を越えた東シナ海側の地域では、「宜蘭県(Yilan)」や「屏東県(Pingtung)」など一部のエリアにとどまった。
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2022年と比較すると、減少した都市圏・直轄市・県は8となり、増加(3)を大きく上回った。このうち、社数ベースでは「台北都市圏」の減少幅が最も大きく、2022年の1420社から1397社と2年で23社・1.6%減少した。台北都市圏に次いで減少幅が大きかったのは「高雄市」で同10社・7.1%減少した。いずれの都市も、台湾への進出企業全体が減少した影響を受けた。
一方、増加した県で特に目立つのは「嘉義県/嘉義市(Chiayi)」で、2022年の6社から倍増の13社が判明した。同地域では、主産業となる農業に加え、ドローンセンターの開業、世界最大手の半導体ファウンドリ・TSMC(台湾積体電路製造)が新たな工場を建設するなど半導体産業の集積も進んでおり、食品産業や半導体部材関連の企業などで進出がみられる。
台湾進出企業の想定リスク「戦争・テロ」は2割未満 台湾有事の備えが課題に
近時の台湾情勢をめぐっては、ロシアによるウクライナ侵攻以降、グローバルに拡大したサプライチェーン(供給網)の寸断というリスクが顕在化し、経済面で大きな脅威となっている。加えて、足元では中国・台湾間の緊張が高まっており、日本企業でも対応が急がれている。
他方で、こうした台湾情勢や中国情勢の悪化に対する日本企業の備えは、十分とは言い難い状況が続いている。2022年と24年の調査データを基に、台湾・中国それぞれに進出している企業のBCP(事業継続計画)の策定動向について分析した。その結果、事業が中断する想定リスクのうち国家間の武力衝突や紛争など「戦争・テロ」をあげた企業の割合は、2024年調査で台湾進出企業のうち18.1%、中国進出企業で15.1%だった。全国平均(調査全体)の16.0%に比べると、台湾進出企業の同割合は高い水準となっているものの、22年に比べると僅かに低下するなど、有事を含めた危機対応に課題を抱える企業は少なくないとみられる。
足元では、既に2年前から「もしもの事態が発生した場合の対応策を考えなければならない」といった声が台湾・中国に進出する企業から聞かれるなど、台湾有事への危機感を強める企業は多い。台湾在住の駐在員やスタッフの退避計画や、特に半導体関連で強まるサプライチェーンの管理など、万一の事態に備えた退避計画や代替調達・生産案の確保が必要になる。
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