プレスリリース
伝承団体の「継続の不安」91%、公的な資金の支援「不十分」61%(岩手・宮城・福島の震災学習実施26団体、伝承施設運営25組織へのアンケート調査)
震災伝承の持続性と、次世代への継承を支える新たな仕組みへの期待
公益社団法人3.11メモリアルネットワークは東日本大震災の伝承活動の現状と課題の共有、防災・減災活動の活性化を目的として毎年調査を行っており、2023年震災伝承伝承調査第2弾の結果を公開しました。
東日本大震災を伝承する団体の91%が継続性の不安を抱えており、また、伝承継続に関する公的な資金支援を「不十分」とする回答は61%を占めていました。復興庁では発災15年後の「総括」に向けた議論が行われているところですが、災害が多発する日本において、国民一人ひとりの防災意識の向上を担う震災伝承の取り組みに対して、東北の被災自治体だけの資金や人材の負担では難しい現状が明らかとなり、次世代への伝承を支える新しい仕組みへの期待が確認されました。
リンク:2023年東日本大震災震災伝承調査第2弾
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伝承団体の「継続性の不安」が92%、公的な資金支援状況「不十分」が61%
震災伝承活動の資金と、支援があった場合の持続性見通し
震災学習プログラム実施団体(以下、伝承団体)、震災伝承施設運営組織(以下、伝承施設)の財源不足はこれまでの調査でも課題であったが、本調査にて1年後、3年後、10年後、30年後と区切って質問することで、年月を増すにつれて見通しがつかなくなる現状が明らかとなった。
復興原則として「教訓の次世代への伝承」が掲げられている中、伝承団体では30年後には「全く見通しがついていない」か「わからない」のみの回答という厳しい状況であったが、伝承施設はある程度の見込みを持つ回答も見られた点が異なっていた。
また、5年間の支援があれば、伝承団体、施設ともに、収益性・持続性が高まる見通しも示された。
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伝承団体の30年後の継続の見通しは「全くない」「わからない」のみ
伝承活動継続のために特に重要な人材
活動継続に最も重要な人材を、伝承団体は「語り部」、伝承施設は「行政職員」と回答していた。語り部は伝承施設においても重要とされていた一方で、「伝承施設スタッフ」、「事務スタッフ」、「民間企業関係者」については団体と施設の立場によって回答に差異が見られた。
「その他」として、インバウンドという回答があった。
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後世への伝承活動継続のために特に重要な人材は、語り部や行政職員が上位
震災伝承の成果指標
震災伝承の成果を測るのにふさわしい指標として、伝承団体、伝承施設共に「来訪者数」、「震災の教訓への理解促進」、「自らの命を守り抜くための主体的に行動する態度」が上位となった。
「安全安心な社会づくりに貢献する意識」は、伝承団体と伝承施設で回答傾向に差異が見られた。
来訪者数以外の指標候補は、復興基本方針に掲げる語句や復興庁の行政レビュー指標を選択肢としたが、「その他」として「震災伝承に成果は必要かが疑問」、「回答例から選択できない」という回答があった。なお、復興庁の長期アウトカム指標とされ令和6年度の教訓継承事業である「教訓継承サイトの普及開発コンテンツ数」に関しては、指標と捉える回答が少なかった。
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伝承の成果指標は「来訪者数」、「教訓への理解促進」や「主体的に行動する態度」が上位
公的な資金の現状と期待
伝承団体、伝承施設共に、公的な資金支援を「十分である」とする回答はなく、「どちらかというと十分である」、「不十分である」の回答が過半数となった。
発災15年の「第2期復興・創生期間」後の公的資金支援への期待として、「収束」を良しとする回答はゼロであり、伝承団体、伝承施設のどちらも、過半数が「拡充」を期待していた。
「その他」として、「見直すべきものは見直し、必要なものは残すべきである」との回答があった。
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発災15年後の震災伝承への公的資金支援への期待
各選択肢の回答理由(自由記述)は、以下の通り
<「拡大」選択理由>「震災伝承への公的資金支援の拡充がなければ次の災害に備える為にも東日本大震災の教訓を生かす震災伝承プラットホームの構築が肝要である」、「現在ニーズに対して対応する人材が限られている状況にあるので、今以上に人材育成に対して公的支援を拡充していただきたい」、「支援が無ければ人材の育成も出来ないし、人材の確保も出来ない」、「収益性の追求のみで継続できる事業ではないため」、「来訪者への手厚い支援に比べ、伝承者への支援は足りていない」、「復興・創生期間の今後については、震災伝承事業が大震災の風化防止及び震災を知らない世代への啓発にとって大変重要であることを国民全体に周知する必要性があることから、公的支援は必須のものととらえている」、「当社では今後も複数の震災遺構の保存を行う予定であり、民間では限界もあるため支援を必要としている」
<「維持」選択理由>「コロナ禍が落ち着きを見せ、教育旅行の方面が関東・関西へ戻ってきていること、能登半島地震からの復興による震災プログラム造成などにより、東北方面への旅行がますます減少することが考えられる。そのため、コンテンツ造成や地域間連携するための包括的な支援などが望ましい」
「その他」選択理由:「支援と言うより、当たり前のような予算化は出来ないのかなと感じます」
震災伝承継続のための「新しい仕組み」
伝承団体、施設が抱える人材や財源の課題に対して、 後世への伝承活動継続のために、「震災伝承継続のための新しい仕組み」が必要だと思うかを問うたところ、 21の伝承団体と15の伝承施設が「はい」と回答があた。(他は「わからない」が多く、「いいえ」は1件のみであった。)
その「仕組み」の内容について、伝承団体、伝承施設共に「被災県単位での制度の新設」、「連携させる存在」が上位となり、県域や立場を超えた連携の必要性が示された。
「その他」として、「総務省消防庁の防災意識向上プロジェクトの事業を自治体の各教育機関と結び活用出来るように出来たら良い」、「特に津波に関しては「早期避難」により多くの命が救われる想定があるため、避難行動を促すソフト施策への投資は地域の力となるため非常に有効」との回答があった。
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震災伝承継続のための新しい仕組み
[画像7: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/110976/18/110976-18-a257dca604f32f2b55f52c6dfc113671-1500x975.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
震災伝承活動イメージ:宮城県石巻市における震災伝承施設・震災遺構と、「語り部とあるく3.11」プログラム
調査概要
【対象】岩手・宮城・福島の3県で震災伝承活動に取り組む団体、施設
(震災学習実施26団体、伝承施設運営25組織から回答受領)
【期間】2024年6月3日〜6月24日
【方法】メールで依頼・回答
【主な調査内容】Q1:基本情報、Q2:連携・相乗効果、Q3:学校における震災学習、Q4:企画や工夫、Q5:活動継続の見通し、Q6:今後に必要なこと・もの
【実施主体】公益社団法人3.11メモリアルネットワーク
【アドバイザー】東北大学災害科学国際研究所 佐藤翔輔准教授
【一部助成】2024年度日本郵便年賀寄付金配分事業
本調査の詳細は、2023年東日本大震災伝承調査第2弾詳報として、WEBサイトに公開しています。震災伝承の取り組みの中、本調査にご協力をいただいた関係者の皆さまに感謝申し上げます。本調査結果が、災害から命を守る取組みを少しでも進めるきっかけになれば幸いです。
プレスリリース提供:PR TIMES