プレスリリース
茶美会 二代主宰で茶人 伊住禮次朗氏と共同でアートプロジェクト「黒節分」を発表
現代アーティストのナカヤマン。が、裏千家15代鵬雲斎二男・伊住政和氏によって1992年に創設された茶美会文化研究所のクリエイティブディレクターに就任、『茶の湯』文化の持続的な発展を見据えた研究と実践を開始する。「茶美会」は、伊住政和氏の二男・禮次朗氏を二代主宰とし、現代社会において求めるべき「本質の探究」を『茶の湯』を通して志向していく。現在複数のプロジェクトが進行しているが、その一つが茶懐石にフォーカスしたアートプロジェクト「黒節分」。ナカヤマン。の新作『年ごとに 人はやらへど目に見えぬ 心の鬼はゆく方もなし WHITE-TO-BLACK』としても存在する、毎年秋から冬への節分に開催されるパフォーマンスアートが進行中である。
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本日2023年2月24日、現代アーティストのナカヤマン。は茶美会文化研究所(主宰:伊住禮次朗氏)のクリエイティブディレクターに就任し、日本を代表する伝統文化の一つである『茶の湯』文化の持続的な発展を見据えた研究と実践を開始します。
同組織は裏千家15代鵬雲斎二男・伊住政和氏(茶名:宗晃/1958-2003)によって1992年に創設されました。所名に冠する「茶美会(さびえ)」という言葉は、伊住政和氏が「茶道」や「茶会」という言葉の与える固定的なイメージを打破するために、「茶の美に出会う」というコンセプトを持つ言葉として提唱した造語です。
茶美会文化研究所の創設から遡ること4年、1988年に工芸の作家や料理人を集めて亭主さながらに客と交流する「クラフトシアター茶美会」というイベントを起点とし、原宿のクエストホールを会場に「茶美会 然」(1992年)、「茶美会 素」(1993年)という展覧会が開催されました。
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この催しは折しも1964年の東京オリンピックを契機にデザインの時代を迎えた日本において、そのムーブメントの中心とも言える原宿・青山を拠点として活躍したグラフィックデザイナーの田中一光氏や麹谷宏氏をはじめ、建築家・プロダクトデザイナーの黒川雅之氏、インテリアデザイナーの内田繁氏や杉本貴志氏、ファッションデザイナーの三宅一生氏やコシノジュンコ氏、いけばな草月流三代家元・勅使河原宏氏、戦後イタリアのデザイン界を牽引したエットーレ・ソットサス氏や韓国出身のアーティスト崔在銀氏など、多くのクリエイターの参画を得て開催された展覧会で、当時の「茶美会」における活動の集大成となりました。その事績を振り返ると当時の「茶美会」は、現代と伝統の融合をデザインの視点から考える運動体へ展開したと言えます。
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この度、再始動した「茶美会」は、伊住政和の二男・禮次朗氏(茶名:宗禮)を二代主宰とする組織です。本日クリエイティブディレクターとして就任した現代アーティストのナカヤマン。と共に、第二世代ともいえる活動を試みるものです。同組織はかつての「茶美会」が時代に対峙して取り組んだ姿勢に強く共感しつつも、再始動に際して独自の考えを示しています。
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第一、茶の湯は鎌倉時代に抹茶文化が日本へ伝来したことに始まり、千利休をはじめとする先人が創意工夫を重ねる中で独自の発展を遂げた文化です。亭主と客の交流によって育まれたもので、その場として茶事や茶会があります。日常的な交流が行われてきた中で、亭主と客の相互交流を充実したものにするべく、亭主はコンセプトを設定して衣・食・住を整え、客はその趣向を味わい、意図を読み解くという一会にも発展してきました。茶の湯の大成者と称される千利休が没してから今日に至るまで、約430年以上もの長きにわたってそのような饗応の様式が継承され、発展してきたことは特筆すべきことです。
その過程で現在に通じる規矩作法が整えられ、それらを学ぶ体系的な稽古法も次第に整えられました。「伝統の継承」が繰り返されてきたわけですが、その中で「本質の探究」を志す姿勢を欠いたとしたら、様式の伝達だけに陥る恐れもあります。利休は古法に習い先達の教えを学びましたが、晩年にはそれを破ることをいとわずに自身の茶を見出しました。これは「伝統の継承」と「本質の探究」というプロセスを経た上で結実したものと言えるでしょう。
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二代主宰・伊住禮次朗氏は、千利休を祖とする茶道裏千家の分家である伊住家に生まれ、茶の湯文化における「伝統の継承」に携わってきました。当該文化を取り巻く環境は厳しい状況が続いており、その発展的な未来を描くことの重要性を感じたことでかつての「茶美会」の活動に強く共感し、この度の再始動に至りました。その上で、先例を挙げたように「伝統の継承」と「本質の探究」は併存すべき両輪であり、文化はそれによって持続的発展を遂げるものだと考えます。しかしながら「伝統の継承」という役割の重要性が時を経るごとに増す一方、後者が置き去りになる場合も少なくありません。
今日、テクノロジーの発展により表現の方法は多様化し、玉石混交の情報が氾濫する現代社会において文化の空虚化への危機感は増しています。その表現の根底にあるべき「本質の探究」を志す姿勢がこれまで以上に求められる時代にあると言えるでしょう。以上により、再始動する茶美会文化研究所は、茶の湯文化における「本質の探究」を志向する研究と実践を通して、文化の持続的発展の一翼を担うべく活動してまいります。
アートプロジェクト「黒節分」
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「出し手が設定するコンセプトを、受け手が読み取る行為である」。その点で現代アートと茶の湯には大きな共通項が存在します。コンセプト表現を目的にした数時間に凝縮された「衣食住」、すなわち茶懐石にフォーカスしたのが本プロジェクトです。パフォーマンスアートとして扱うことで新たに可視化される本質を探究します。
千利休は道具のデザインを刷新する行為に始まり、それまでの常識を覆しました。それはコンセプト表現の最大化を目的としています。本企画も利休の精神に習い、コンセプト表現に重きを置いています。逆に言えば、それは利休の行動を習うものではありません。日本古来の文化的モチーフと技法を主軸に据えつつも、ファッション・マンガ・アニメ・特撮・テクノロジーなど現代の文化を区別なく和えることで目指すのは、時間からの脱却です。固定されない時間表現の中で、共通項として炙り出される「本質」を汲み取る。まさに現代アーティストのナカヤマン。が得意とする手法で組み立てられています。茶懐石でありつつも、彼の新作『年ごとに 人はやらへど目に見えぬ 心の鬼はゆく方もなし WHITE-TO-BLACK』としても存在する。毎年の立冬の前日、秋から冬への節分に開催される完全招待制の茶懐石、ユーザー参加型パフォーマンスアートです。
茶美会二代主宰 伊住禮次朗氏コメント
「茶美会(さびえ)」は、父・伊住政和(茶名:宗晃/1958-2003)が作った造語です。「茶の美に出会う」というコンセプトを持つこの言葉はその後、多くの方々との出会いを通してクリエイティブな思索を重ね、茶の湯という伝統が現代にあるべき姿を考える取り組みへと発展していきました。
その活動の目的について、茶美会文化研究所の創設者・伊住政和は次のように述べています。「茶美会の目的は、茶道という伝統を破壊してあたらしく見せる為の趣向の茶会ではなく、この多面な要素をもつ茶の湯文化を常に今において、検証し、その本質を現代生活者に伝達することである。」
この志を継承し、現代に相応しい「茶美会」のあたらしいかたちを作り上げていくという覚悟で、茶美会文化研究所の活動を再開いたしました。父がつくり大切に育んだ「茶美会」という言葉を掲げながら、今日において茶の湯文化の本質を探究する立場から研究と実践を積み重ねることで、文化の持続的発展の一翼を担うべく活動してまいります。
伊住禮次朗氏プロフィール
裏千家16代家元坐忘斎の実弟・伊住宗晃の二男。茶名宗禮。裏千家茶道を修めると共に、茶道史や工芸史の研究者としても活動している。同志社大学商学部商学科卒業後、京都造形芸術大学大学院芸術研究科芸術専攻修了。博士(学術)。大阪府堺市の文化観光施設「さかい利晶の杜」開設に係る堺市の学芸員(非常勤)勤務を経て、現在は茶道資料館副館長・今日庵文庫長、裏千家学園副校長。2022年からはNPO法人和の学校理事長に就任し、茶美会文化研究所を再始動させた。裏千家茶道を中心とした様々な領域で活動を展開している。
茶美会クリエイティブディレクター ナカヤマン。コメント
「型の継承」と「道の探求」の両立という学びを、大仏師の方と作品を創った際に得ました。デザインの数値化など、遵守されるルールが多数あるのが仏像彫刻です。他方で統計的に研究すると、激動の時代には救いを求めて穏やかなお顔が、繁栄の時代には慢心を戒める厳しいお顔が造られる傾向が見えます。仏像の意義と本質が見て取れる事象です。
二つの傾向は陰陽の螺旋の如く時代に併せて循環し、仏像彫刻を高みに導きます。ところが江戸時代以降、現在に至るまで仏像のお顔は安定します。江戸時代260年の安定ゆえに陰陽が無いのは理解に易く「型の継承」片輪で十分とも言えます。しかし明治以降も激動の時代が無いとは言えないでしょう。
260年という何世代もの安定と平和の中で、「道の探求」という行動規範自体が喪失した可能性があります。事実、江戸時代には大衆文化と商業発展の中で、派手さ、分かり易さなど、セールスポイントの拡張が起こります。その中で「道の探求」という重要な要素を喪失するリスクがあるならば、資本主義の時代に生きる我々は千思萬考すべきです。さて、茶の湯文化においてはどうでしょうか。もしも失われた片輪があるのならば、茶美会がそれを補う切っ掛けになればと思うのです。
ナカヤマン。/YAMAN NKYMN プロフィール
ロサンゼルスと京都を拠点にするマエストロ・ストラテジスト、コンテンポラリーアーティスト。2007年以降ソーシャルメディアを活用したバイラルマーケティングやコンテンツクリエイションで注目を集め、ルイ・ヴィトン、シャネル、グッチなど海外のラグジュアリーブランドをパートナーに活動した。2019年「シン・エヴァンゲリオン劇場版」にストラテジストとして参画し、映画監督の庵野秀明と共同代表で八万・能を設立。結果、同作はシリーズ前作の約2倍となる興行収入100億円を突破した。
自らも2021年の西本願寺 国宝 飛雲閣での展示”陸奥の 安達原の黒塚に 鬼籠もれりと言うはまことか (UN)KEEPALL”で、現代アーティストとしての活動を開始した。翌年にはアートフェアFrieze Week Los Angelesの公式プログラムに同作品が招致されプレミア上映を実施、ウエストハリウッドのシャトーマーモントでは同上映のプレミアディナーを開催、初展示から僅か一年でグローバルデビューを果たした。
関連リンク
Website 茶美会文化研究所: https://sabie.jp
Website screamlouder Inc.: https://screamlouder.com
YouTube @nkymn: https://www.youtube.com/@nkymn
Instagram @nkymn: https://www.instagram.com/nkymn
茶美会写真撮影 畠山崇/点前写真撮影 小林庸浩
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