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Spectrum Instrumentation GmbH

高解像度デジタイザがダークマターの捕捉に貢献

(PR TIMES) 2022年11月02日(水)12時45分配信 PR TIMES

スペクトラム社のPCカードにより、韓国の基礎科学研究院(IBS)での、ダークマターを証明する素粒子「アクシオン」の効率的な探索が可能に

デジタイザなど計測機器のメーカであるスペクトラム・インスツルメンテーション社(本社ドイツ・グロースハンスドルフ/以下、スペクトラム社)の高速PCIeデジタイザが、韓国の基礎科学研究院(IBS)での最新かつ最先端の実験に採用されました。
科学者たちは、銀河など宇宙の大規模構造の形成、進化、挙動を説明するために必要なダークマター(暗黒物質)の存在を予想していました。理論上、宇宙にはダークマターが通常の物質の最大5倍も存在することが示唆されています。ダークマターを実際に構成する物質は何かという疑問はまだ解明されていませんが、科学者たちは候補となる粒子をいくつも特定しています。その中でも特に有望なものが、電子の質量の10兆分の1しかないと言われるアクシオンです。韓国では、基礎科学研究院(IBS)に専門家チームを結成し、アクシオンの発見を目指して研究しています。
[画像1: https://prtimes.jp/i/95734/8/resize/d95734-8-faa2ff60c65b77c8574a-4.jpg ]

図1:このCAPP装置には、8Tの超伝導マグネットが搭載されています。キャビティーからの微弱な信号(10−24 W)は増幅され、HEMTアンプによるRF受信機チェーンを経て、収集・分析・保存のために送信されます。

アクシオンは強い磁場が存在すると光子に変換されると予想されています。そこで、この韓国チームは、超強力な磁石を備えた新しい研究所を建設して、その現象を正確に捉えようとしました。そして、この現象を視覚化するためにハロスコープが使われ、高速データ収集システム(DAQ)により取得、分析し、その結果が保存されました。

IBSのCenter for Axion and Precision Physics Research(CAPP)では、今後10年間にわたってさまざまな実験を行い、アクシオンの存在を確認し、最終的にはその特性を解明する計画を持っています。最初の実験結果はすでに報告されています。CAPPのチームは、1.6〜1.65GHzの周波数に対応する6.62〜6.82μeVの質量をもつアクシオンを探索しました。この探索には、画像1に示すCAPPの装置が使われました。研究者らは、この質量範囲ではこれまでで最も感度の高い90%の信頼度で、その範囲内にアクシオンダークマターやアクシオンのような粒子が存在しないことを実験で示しました。

[画像2: https://prtimes.jp/i/95734/8/resize/d95734-8-3a8f3e92cd5ea86bb1a0-2.jpg ]

図2:アクシオン探索では、ハロスコープからの信号を増幅してからDAQに取り込みます。

この研究所が最近導入したデータ収集システムの主要コンポーネントは、スペクトラム社のPCIeデジタイザカード モデルM4i.4470-x8です。科学者たちがこの機器を選んだ理由は、2つのチャネルに同時に入力する信号を最大180MS/sのサンプリングレート、16ビットの垂直分解能でサンプリングできるからです。重要なのは、収集されたデータをPCIeバス経由で3GB/sを超える転送速度でコンピューターにストリーミング格納できることです。つまり、すべてのデータを損失ゼロで取得し、ホストコンピューターに送信可能です。図2に典型的な実験装置のブロック図を示します。

CAPPのリサーチフェローであるByeongRok Ko博士は次のように説明しています。「私たちの目標は、アクシオンハロスコープ検索の性能指数、すなわちスキャンレートを改善することでした。まず、DAQプロセスにオンライン高速フーリエ変換(FFT)が含まれる場合、単一チャネルで99%を超える実用的なDAQ効率を実現しました。次に、IQミキサーと2つの並列DAQチャネルを使用して、DAQ効率を損なうことなくソフトウェアベースのイメージ除去を実装しました。これにより、従来のスペクトラムアナライザを使用していた初期の実験装置に比べ、効率が2倍以上アップしました」

アクシオンハロスコープによる検索は、余計なイメージ背景が混信するヘテロダイン受信機を採用しているため、イメージ除去が重要になります。つまり、イメージ除去は高速でのスキャンを維持するために不可欠なのです。この場合、高速DAQシステムは、600から2,200MHzの周波数範囲で約35dBのイメージ除去が可能です。

ByeongRok Ko博士は、次のように述べています。
「スペクトラム社のデジタイザカードを採用したのは2つの重要な機能が備わっていたからです。1つ目は、バッファとして使用できる2GSamplesのオンボードメモリがあること。2つ目は、PCI Express x 8 Gen 2インターフェースでのFIFO転送モードで、3GB/sを超える速度で連続的にデータストリーミングができることです」

DAQシステムのもう1つの課題はデータの後処理です。これには、単位変換、オンラインFFT、平均化、およびパワースペクトルのディスクストレージへの書き込みが含まれます。後処理時間のほとんどはオンラインFFTに費やされます。アクシオンハロスコープの実験では、アクシオンの質量が不明のため、ほとんどのケースで異なる共振周波数のデータが必要になります。また、さまざまな理由から、各共振周波数のデータは異なるタイムスタンプでいくつかのサブセットに分割されることがあります。そのような場合、次のデータを取得している間に後処理を並行して実行できます。幸いなことに、スペクトラム社のデジタイザには、さまざまなプログラミング言語をサポートするドライバが付属しています。そのうちの1つがPython用ドライバです。Pythonのマルチプロセッシングモジュールは、このようなアプリケーションに最適であることから、上記の現象を実証するために使用されました。

[画像3: https://prtimes.jp/i/95734/8/resize/d95734-8-6d41abab25d9cc29f372-3.jpg ]

図3:CAPP実験ホールでは、複数の暗黒物質探索実験を同時に設置し、運用することができます。実験室には、並列に実験装置を設置するための7つの低振動パッドと、複数の冷凍機、超伝導マグネットが設置されています。

CAPPのディレクターであり、KAIST(韓国科学技術院)の教授でもあるYannis K. Semertzidis氏は、次のように述べています。「この実験は、100メートル走ではなく、マラソンで初めてゴールするようなものです。実際にやってみることで学べることがありました。将来、さらに高度なシステムで使えるような斬新な概念を試験しました」

研究チームは、ターゲットの周波数範囲において、これまでに行われた他のすべての実験よりもはるかに優れた感度に到達できることを実証しました。今後は、さらに大規模なシステムで実験を拡張する計画です。
現在、CAPPのチームは、探索プロセスを加速するためさまざまなシステム設計に基づいて複数の実験を行っています。これにより、異なるアクシオンの質量範囲を並行してターゲットにすることができます。複数の実験装置を設置したCAPP実験ホールの全景を図3に示します。興味のある読者は、CAPPのウェブサイトhttps://capp.ibs.re.kr/html/capp_en/で実験の進捗状況を確認するができます。 DAQ システムの開発、さまざまな取得モード、およびテスト結果について論じた研究論文は、こちらから入手できます。https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1748-0221/17/05/P05025/meta

スペクトラム・インスツルメンテーション社(Spectrum Instrumentation)について
1989年に創業したスペクトラム社(CEO 兼 創業者Gisela Hassler)は、モジュラー設計を利用することでデジタイザ製品および波形発生器製品をPCカード(PCIeおよびPXIe)やスタンドアローンのEthernetユニット(LXI)として幅広く生み出しています。スペクトラム社は30年間に、トップブランドの業界リーダーやほとんどすべての一流大学を含む、世界中のお客様に製品をご利用いただいています。当社はドイツのハンブルク近郊に本社を構えており、5年保証と設計エンジニアやローカルパートナーによる優れたサポートを提供しております。スペクトラム社の詳細については、https://www.spectrum-instrumentation.com/ をご確認ください。



プレスリリース提供:PR TIMES

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