プレスリリース
【東洋大学国際観光学部News Letter 2024 Vol.4】 新しい観光のパラダイム「対面サービスのコミュニケーション、その価値の再構築」
東洋大学国際観光学部では、新しい観光の考え方・取り組みを連載で紹介する「新しい観光のパラダイム」を、2021年度から公開しています。コロナ禍が落ち着き、観光の復活が本格的に進められているこの時期に、観光産業・教育における新しい潮流を解説するコンテンツを、連載していきます。2024年度のテーマは「日本の鉄道経営と今後のイノベーション」「再始動したインバウンド観光とその展望」「ポストコロナにおける宿泊産業の潮流」「対面サービスのコミュニケーション、その価値の再構築」の4つです。東洋大学ではこれからも、変化に対応し、時代を切り拓ける人材を育成していきます。
対面サービスの環境とニーズの変化
観光に関わる業界の中でサービス業は重要な産業の一つです。近年、その様相は大きく変化しています。人が有形無形のサービスを対面で提供する従来の形態(これをここでは「対面サービス」と呼ぶことにします)に加え、機械やインターネット関連の機器を介したものやAIを使った遠隔操作でのサービス提供も可能になりました。これらの「機器によるサービス」は効率性や経済性に価値を見出す市場の変化と技術革新がもたらしたものです。さらに労働人口の減少による人手不足問題が顕著になり、先般のコロナ禍で人と人が接するリスクに注目が集まると、企業はその経営資源や経営戦略によって対面サービスから機器によるサービスへの変換を加速するようになりました。
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オーダーされた食事を顧客のテーブルまで運ぶサービスロボット:筆者撮影
対面サービスの新たな価値と棲み分け
このような変化は、サービスを受ける目的や予算、嗜好などによってサービスの提供方式を選択することを可能にしました。効率化、均一化、人件費削減による低価格化を求める場合は機器によるサービスが適当ですし、よりきめ細やかでフレキシブルな交流を求める場合は対面サービスが適します。今後はAIの人の言語的・非言語的コミュニケーションを読み取る学習も一層進むと思われますが、それでも人が意識的および無意識的に行なってきた非言語コミュニケーションのうち、相手との距離感、匂い、その場の他の刺激への関心度などからの情報に細やかに対応することは難しいでしょう。定型の手順では対応しきれない不測の事態には、サービス提供者のホスピタリティや機転などの個性を色濃く出しながら相手と交流しつつ解決策を模索することも対面サービスが得意な点です。これらの特長を十分に理解し上手に演出することで、新たな対面サービスの価値構築に繋がると考えます。
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ロボットがフロント業務を担当:「変なホテル 東京銀座」ホームページより
持続可能で価値ある対面サービスのために
対面サービスが「人だからこそのサービス」として真価を発揮するためには、サービス提供者が自己効力感や誇りをもって人との関わりを楽しめるような環境整備が必要です。そのためには、提供者がサービスの手順やマニュアル的接客マナーだけでなく、対面サービスの意義を理解し「感情労働論」や「アサーション論」などを基にしたコミュニケーションスキルを習得する必要があると考えます。また、提供者と受け手の双方がそれぞれ、互いに人として対等な関係にあるという意識を持つことも鍵になります。これらに国や企業が主体となり取り組むことがサービス提供者のストレスを軽減し、日本の「おもてなし」文化を、過剰でなく自然な形で存続させることになるでしょう。
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安宅 真由美
東洋大学国際観光学部 准教授
専門分野:経営管理、組織内コミュニケーション、ホスピタリティ・マネジメント
研究キーワード:アサーティブ・コミュニケーション、感情労働、エアライン・サービス
本件に関するお問合わせ先
東洋大学総務部広報課 MAIL:mlkoho@toyo.jp
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