プレスリリース
酪農学園大学 食と健康学類の小林道准教授らの研究で、妊娠中の中食の利用頻度が産後うつ病に関連することを明らかにしました。
研究成果のポイント
・妊娠中に持ち帰りの弁当や総菜(以下、中食)を週3回以上利用していた妊婦は、週1回未満利用の妊婦と比較して、産後うつ病疑いと判定された割合が高かった。
・中食の利用頻度が高いほど、豆類、野菜類、卵類の摂取量が低い傾向であり、果物類及び菓子類の摂取量が高い傾向であった。
研究成果の概要
妊産婦の精神的健康に関する研究に取り組んでいる、本学食と健康学類の小林道准教授らは、妊娠中の中食の利用頻度が産後うつ病に関連することを明らかにしました。
妊産婦のうつ病(周産期うつ病)は、妊産婦の7人に1人が患うと推計されています。産後うつ病は産後4週間以内に発生する可能性があり、女性にとって重要な健康課題となっています。中食や外食は、一般的に食塩を多く含んでいることや、たんぱく質等の栄養素が少ない傾向にあることが知られており、その利用頻度が高いことは、野菜類の低摂取量、肥満や抑うつ症状のリスクと関連していることが報告されています。しかし、これまでに妊娠中の中食や外食について検討された研究はほとんどなく、妊娠中の中食や外食の利用頻度と産後うつ病の関連については検討されていませんでした。
本研究は、2019年7月〜2022年7月に江別市在住の妊婦639名を研究対象として自記式質問紙調査を実施し、妊娠中の中食・外食の利用頻度、食品摂取量及び産後うつ病を評価しました。
結果として、妊娠中の中食の利用頻度が週3回以上の人は、週1回未満の人と比較して、産後1か月以内に産後うつ病疑いの割合が高かったことが明らかになりました(調整オッズ比と95%信頼区間:4.16, 1.68-10.27)。
加えて、中食の利用頻度が高い人では、豆類、野菜類、卵類など摂取量が低いことも明らかになりました。多様な食品の摂取に注意することは、産後うつ病の改善に役立つ可能性があります。論文は9月16日に国際学術雑誌British Journal of Nutrition電子版に掲載されました。
研究の意義
今回の研究結果は、産後うつ病のリスクが高い妊婦の早期発見や母子保健に関する施策の立案に役立てられることが考えられます。産後うつ病は、出産した後の子どもとの関係にも悪影響を及ぼすことが報告されており、母の健康と子どもの健やかな成長のためにも、産後の女性の精神的健康に対するケアは重要です。妊娠中は食事の準備が大変な時期もあり、共働きで多忙な家庭も多いため、中食の利用は日々の食生活を助ける役割を果たしています。したがって、豆類や野菜類などの多様な食品が摂取できるように配慮された中食関連商品の増加は、妊産婦の健康増進に寄与する可能性があります。
一方で、今回の研究対象は小規模な集団であり、妊娠中の外食と産後うつ病との関係を検討するには不十分でした。中食の内容も国によって異なることから、今後は他国や地域による多様な集団を対象とした追加の研究が必要であると考えます。
発表論文
Tohru Kobayashi, Reiji Kojima, Emiko Okada. Association between frequency of using ready-made meals or eating out during pregnancy and postpartum depression among community-dwelling pregnant women: A prospective cohort study. British Journal of Nutrition. (Epub ahead of print) https://doi.org/10.1017/S0007114524001545
▼本件に関する問い合わせ先
食と健康学類
准教授 小林 道
住所:北海道江別市文京台緑町582番地
TEL:011-388-4728
FAX:011-388-4728
メール:tkoba@rakuno.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/