プレスリリース
〜超低消費電力駆動のLDチップの実現により、環境負荷の低減に大きく貢献〜
● C帯でのレーザダイオード(LD)チップ55℃において840mW動作可能であることを確認
● 500mWファイバ出力時の無効電力を半分以下に削減
● 500mWファイバ出力を5W以下の消費電力で駆動可能なレーザチップの量産技術開発を開始
古河電気工業株式会社(本社:東京都千代田区大手町2丁目6番4号、代表取締役社長:森平英也)は、高出力低消費電力駆動のラマン増幅器用励起光源FRL1441Uシリーズについて、C帯での55℃動作を達成し、無効電力を半分以下に削減することで500mWファイバ出力時の消費電力が従来製品の仕様8Wと比べ半分以下となる3.7Wの超低消費電力駆動を確認、量産技術開発を開始しました。
■背景
クラウドサービスの普及や生成AIの登場を背景にデータセンタなどで通信トラフィックが増大するなか、通信伝送速度の高速化に伴い、信号受信側のOSNR(注1)の劣化により伝送距離が短尺化し、特に既存の通信システムを活用して高速化する場合、信号光の品質を劣化させずに光出力を増幅するラマン増幅器の役割がより重要となってきます。また、高速伝送により信号の波長幅が拡がるため、大容量伝送を行うためには波長帯域の拡大が必要となり、励起用光源の波長を選択することで任意の信号光源を増幅できるラマン増幅器には高い柔軟性が求められます。一方で、従来のC帯・L帯に加え、S帯やU帯への帯域拡張により、使用される励起光源の数が増加するため、高出力低消費電力での駆動が一層重要になります。
励起光源は、搭載している熱電クーラー素子の消費電力削減が励起光減全体の消費電力削減につながります(図1)。励起光源が高温環境で使用される場合、LDチップを冷却する必要がありますが、これにより熱電クーラー素子の電力消費が増加し、励起光源の消費電力が上昇してしまいます。そのため、励起光源の低消費電力化にはLDチップの高温動作が重要な要素となっています。
■内容
FRL1441Uシリーズは、S帯・C帯・L帯において既存のラマン増幅器用励起光源と比べて消費電力を37%削減し、デュアルポート光源の開発により従来は2台必要だった励起光源を1台に置き換えることで省スペース化が図れることが特徴です。今回は、レーザ光の高出力化とレーザ素子の電気抵抗低減の両立を実現させるためのLDチップの最適化により、C帯において、LD温度55℃で840mWを14ピンバタフライパッケージで達成しました(図2、図3)。また、55℃のレーザ素子の高温駆動により無効電力を大幅に削減することで、現在広く使用されている500mWファイバ出力品の消費電力を、従来製品の仕様(8W)と比べ半分以下の3.7Wに抑えられることを確認し、量産技術開発を開始しました。この開発には、25年以上培ってきたInP(注2)系光半導体材料を用いた光半導体プロセス技術と高精度のファイバ結合技術に加え、当社独自の低損失・高効率の半導体レーザ素子構造を採用しています。また特許取得済み(注3)の高効率動作の半導体レーザ素子構造の設計最適化が生かされています。
本製品は本年7月にオーストラリア・メルボルンで開催される「OECC 2024」において、7月2日に口頭発表を行います。
OECC 2024(英語のみ):https://oecc2024.com/oral-presentation-listing
Paper #349 :https://oecc2024.com/program-overview
なお、本開発は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT(エヌアイシーティー))の委託研究「Beyond 5G超高速・大容量ネットワークを実現する帯域拡張光ノード技術の研究開発」(基幹課題JPJ012368C04501)及び助成事業「超高速・大容量ネットワークを実現する帯域拡張光ノード技術に関する研究開発プロジェクト」(JPJ012368G60101)の一環として実施しており、その成果の一部です。
当社は今後も低消費電力高出力レーザチップ技術を開発し、モジュールの低消費電力化の加速と環境に優しいネットワークの構築に貢献します。
[画像1]https://digitalpr.jp/simg/1782/90827/380_239_202407011007566682016ca211d.png
図1 励起光源構成図
[画像2]https://digitalpr.jp/simg/1782/90827/380_356_202407011008106682017a41efd.png
図2 電流ー光出力特性
[画像3]https://digitalpr.jp/simg/1782/90827/380_262_2024070110082466820188d7023.png
図3 モジュール外観写真
(注1)OSNR(Optical Signal to Noise Ratio):光信号 対 雑音比を表すパラメータ。
(注2)InP(Indium Phosphide):レーザダイオードチップ、高速トランジスタの製造に使用されるIII-V族半導体の一種。
(注3)米国特許US 9,083,150 B2
■関連ニュースリリース
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https://www.furukawa.co.jp/release/2023/comm_20230929.html
■古河電工グループのSDGsへの取り組み
当社グループは、国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」を念頭に置き、2030年をターゲットとした「古河電工グループ ビジョン2030」を策定して、「地球環境を守り、安全・安心・快適な生活を実現するため、情報/エネルギー/モビリティが融合した社会基盤を創る。」に向けた取り組みを進めています。ビジョン2030の達成に向けて、中長期的な企業価値向上を目指すESG経営をOpen,Agile,Innovativeに推進し、SDGsの達成に貢献します。
古河電工グループのSDGsへの取り組み
https://furukawaelectric.disclosure.site/ja/themes/182