プレスリリース
9割強が生成AI導入を有益と考え、9割弱が既に導入と回答
生成AIの導入目的は「業務効率化」が圧倒的、経営層に近づくほど「イノベーションの加速」も増える
社内の利用割合が高く浸透度が高い企業ほど、意思決定スピードや生産性向上の成果を感じる人が多い
約6割弱の企業が生成AIサービスの自社開発に踏み出し、単純利用から進展し、より能動的な活用へ
約3割が生成AI登場に伴う人員配置転換を実施、2.5割がAIで代替される人材の雇用を減らし始める
デロイト トーマツ グループ(東京都千代田区、グループCEO:木村研一、以下 デロイト トーマツ)は、プライム市場上場の売上1,000億円以上の企業の部長クラス以上を対象とした生成AI活用に関する意識調査を2024年2月〜3月に実施、その結果を発表します。本調査では日本のリーディング企業における生成AI導入・活用の実態、その目的や成果、人員への影響を把握することで、日本における生成AIに関連した課題や展望を深堀りします。
本調査で生成AIの導入率の高さに加え、全社での導入も少なくないことが示されました。生成AIの利用目的は業務効率化が圧倒的に多く、社員の使用割合が高く浸透が進む企業にいる人ほど、意思決定スピードや生産性向上を実感することも分かりました。生成AIはインターネット、スマートフォンに続く、新しいテクノロジーの波であり、より戦略的な活用が求められています。本調査で取締役/CXOクラスがイノベーションの加速を目的に挙げる割合が5割となり、さらなる活用推進が期待されます。実際、生成AIサービスの利用段階から踏み込み、自社ビジネスに適した生成AIサービス開発への姿勢もうかがえました。代替される業務からの配置転換などの動きも表れており、生成AIの登場により、これまでにない変化を始めている企業の姿が浮かび上がってきました。
【主な調査結果】
9割強が生成AI導入を有益と考え、9割弱が既に導入と回答、社内浸透に課題
94.3%の回答者が生成AI導入を有益と考え、87.6%が生成AIを既に導入していると回答しました。生成AI登場からわずか1年強であるにも関わらず、意思決定プロセスが比較的複雑な日本の大企業においては、驚異的な導入率と言えます。また、特定の部署ではなく全社導入を進める割合は、従業員数が多くなるにつれ高くなる傾向が見られました(10万人以上:39.5%、5万〜10万人:32.1%、1万〜5万人:26.5%)。一方で、実際の利用割合については企業規模に問わず「一部の社員のみの利用」の回答が多く、社内浸透に課題が見受けられました。
生成AIの導入目的は「業務効率化」が圧倒的、経営層に近づくほどイノベーションの加速も増え、目的意識が上がる
生成AIの導入目的は、企業規模や業界を問わず「業務効率化」が第一に挙げられています。将来の導入目的も「業務効率化」が圧倒的な一方で、経営層に近づくほど、「業務効率化」に加えて「業務自動化」や「コスト削減が増加する傾向にあります(図表1)。同様に、経営層に近づくほど「イノベーションの加速」についても目的意識が増える傾向にありました。経営者はAIを単なるツールではなく、企業の未来を形作る重要な要素であることを理解し、技術革新の波を捉え、生成AIを取り入れたバリューチェーンの革新、新たな事業エコシステム(生態系)のビジョンを描くことが期待されます。今回、生成AIが搭載された顧客向けサービスの提供についても確認したところ「すでに生成AIが搭載されたサービスを提供している」(15.5%)、「現在生成AIを活用したサービスを検討・開発している」(53.1%)となり、7割近くの企業において、生成AIを活用したビジネス革新が芽吹いていることが分かりました。
図表1 役職別生成AIの活用目的
[画像1]https://digitalpr.jp/simg/2100/89023/700_481_2024052920115766570d7d4c276.png
社員の生成AI利用割合が高いほど、意思決定のスピードや生産性の向上を実感する傾向。いかに社内浸透させるかが導入効果最大化に向けた鍵に
生成AI導入後の社内の意思決定スピードの変化について、生成AIをほとんどの社員が利用していると回答した人の64.6%、半数以上の社員が利用しているという人では46.9%、一部の社員のみ利用していると回答した人のうち20.3%が「意思決定のスピードが大幅に向上した」または「意思決定のスピードがわずかに向上した」と回答しており、生成AIの利用割合が高いほど、意思決定スピードの向上を実感する傾向が見られました(図表2)。
図表2 社内浸透度別意思決定スピードの変化
[画像2]https://digitalpr.jp/simg/2100/89023/700_350_2024052920115666570d7c78711.png
また、生成AI活用による社員の生産性については、ほとんどの社員が利用していると回答した人の75.4%、半数以上の社員が利用していると回答した人では48.5%、一部の社員のみ利用していると回答した人のうち34.9%が社員の生産性が向上したと回答しており、生成AIの利用割合が高いほど、社員の生産性向上を高く実感する傾向にあることが分かりました。生成AIが多くの企業に利用されつつある中で、社内利用が広がる企業とそうではない企業において、導入効果の差が具体的に現れ始めています。
約6割弱の企業が生成AIサービスの自社開発に踏み出し、ベンダー製生成AIサービスの単純利用から進展し、自社に適した生成AIサービスの開発ニーズが見られる
生成AIサービスの自社開発について確認したところ、19.2%がベンダー製品生成AIサービスをそのまま利用している、する予定であると回答した一方で、56.1%がベンダー製や自社製を用いた生成AIサービスの自社開発を行っている、行う予定と回答しており、生成AIを利用するという段階から踏み込んで、自社ビジネスに適した生成AIサービス開発に取り組もうとする姿勢に移行しつつあることがうかがえます。
また、自社開発をするとした回答者のうち、2割弱の企業が自社による独立開発を見込んでいると回答しています。先端技術の登場に伴い、スピード感を持ってリソースを確保する日本企業の存在が一定見て取れます。また、大規模言語モデル(LLM)の導入・開発に関しても、「オープンソースLLMを導入する」と回答した人が約2割であるのに対し、「自社専用LLMを開発する」と回答した人は約3割と上回っていました(図表3)。生成AIサービスの自社開発と同様、自社サービスに合致したLLMのカスタマイズを目指し、ベンダー製LLMに留まらない意向が推察されます。
図表3 大規模言語モデルの導入・開発方法の予定
[画像3]https://digitalpr.jp/simg/2100/89023/700_247_2024052920115066570d762dc31.JPG
3割の企業が生成AI生成登場に伴う人員配置転換を実施、2.5割の企業がAIで代替される人材の雇用を減らし始めている
生成AI登場に伴い、3割が人員配置転換を推進し、また2.5割が将来のAI代替人材の雇用削減を始めていると回答しました(図表4、5)。従業員数10万人以上の企業に所属している回答者においては、生成AIの登場に伴う人員配置転換を、「行っている」が「行っていない」を上回り、積極的な組織再編の姿勢がうかがえます。他方、9割が生成AIのエキスパート人材が不足していると回答し、供給が圧倒的に足りていない現況が分かりました。雇用を巡った組織再編について、海外企業と比較すると保守的態度をとる日本の大企業でも、生成AIの登場により4人に1人が着手していると回答していたのは、目を見張る実態といえます。人員配置転換について企業部門毎に焦点を当てると、6割弱が「IT」、4割弱が「研究開発」について人員増加を行っていると回答し、一方の人員削減については約3割が「人事・総務」「経理・財務」について人員削減を行っていると回答していました(図表6)。
図表4 生成AI登場に伴う人員配置転換の状況
[画像4]https://digitalpr.jp/simg/2100/89023/700_334_2024052920115566570d7b63506.JPG
図表5 生成AI登場に伴うAI代替人材の雇用人数の変化
[画像5]https://digitalpr.jp/simg/2100/89023/700_326_2024052920115266570d7812cce.JPG
図表6 部署別の人員配置転換の増減
[画像6]https://digitalpr.jp/simg/2100/89023/700_195_2024052920115266570d78ccdb7.JPG
【調査結果を踏まえた考察・提言】
デロイト トーマツ グループ パートナー 馬渕 邦美
プライム上場の日本を代表する企業では生成AIが急速に普及していることが改めて明らかになりました。また、生成AI活用に伴い人員配置転換・雇用の見直しを実行する企業が少なからずあることも明らかになり、生成AIが人材や組織に影響をもたらしていることがうかがえます。日本においても生成AIが業界・企業を変革し、新たな価値を創造していくことは疑いの余地がない一方で、経営者は生成AIを単一の業務や部署にとどまるものではなく、企業全体の可能性を広げるものとして捉えるべきです。生成AIを取り入れた新たな事業エコシステム(生態系)のビジョンを描き、それを実現する組織、人材、テクノロジーの基盤を強化することが期待されます。
本調査では生成AIの導入はしたものの、業務活用などに課題を抱えている企業が多いことも浮き彫りになる一方で、社内浸透が高いほど成果を感じる人が多いこともわかりました。特に初期段階は、いかに組織内の意欲と生産性を高められるか、リーダーシップが問われてきます。技術メリットの実証とともに、組織全体にその価値が認識されることで利用が促進され、成功体験が広がっていきます。
[画像7]https://digitalpr.jp/table_img/2100/89023/89023_web_1.png
■生成AI体験施設(AI Experience Center)のご案内
デロイト トーマツ、生成AIによる企業変革を支援する日本初の生成AI体験施設を東京・丸の内に開設
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/technology/solutions/ai-experience-center.html
本件に関するお問合わせ先
<報道機関の方からの問い合わせ先>
デロイト トーマツ グループ広報担当 菊池・内山
Tel: 03-6213-3210 Email: press-release@tohmatsu.co.jp
関連リンク
AI Experience Center
https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/technology/solutions/ai-experience-center.html