プレスリリース
同志社女子大学の今井具子教授ら研究チームが発表、和食がSDGs達成に貢献する 〜世界151カ国の地球規模国際比較研究で明らかに〜
同志社女子大学生活科学部(京都市上京区)今井具子教授らの研究チーム*が、151カ国を対象とした国際比較研究により、和食がSDGs達成に貢献することを明らかにした。この研究成果は2024年3月21日、『Nutrition Journal』に掲載された。
【本研究の要点】
・2019年に健康的な和食を表す和食スコア(Traditional Japanese Diet Score; TJDS)を開発し、和食が肥満、虚血性心疾患、うつ、乳がん発症率や、全死亡率などを抑制し、健康寿命の延伸に貢献することを報告してきた。
・世界151カ国を比較すると、和食スコアが高い国ほど、食糧供給による土地利用面積、温室効果ガス排出量、酸性化物質排出量、富栄養化物質排出量、水ストレスを加味した水利用量が低いことが、明らかになった。
・和食は人々の健康に貢献するとともに、世界規模でSDGs達成に貢献する可能性がある。
【研究内容概要】
持続可能な開発目標(SDGs)の達成には、食による環境負荷の低減が重要である。今井教授らの研究チームは国連食糧農業機関のオンライン統計データ(FAOSTAT)より、伝統的な和食で多く利用される食品である米、魚、大豆、野菜、卵の需給量を国別に多い順に3群に分け、1、0、-1点、反対に和食では利用することの少ない小麦、乳製品、赤肉(畜肉)は需給量が少ない順に3群に分け、1、0、-1点と点数をつけ、合計点を和食スコアとする指標を開発した。
和食スコアが高いほど肥満率や、虚血性心疾患などの発症率が低く、健康寿命が長いなど、健康に貢献することを報告してきた。この研究は和食スコアと数種類の環境指標との関連を世界規模で検討したものとなる。
人口100万人以上の世界151カ国について、2010年のデータを使った解析では、土地利用(β±SE; -0.623±0.161、p<0.001)、温室効果ガス排出量2007(-0.149±0.057、p<0.05)、温室効果ガス排出量2013(-0.183±0.066、p<0.01)、酸性化物質排出量(-1.111±0.369、p<0.01)、水ストレスを加味した水利用量(-405.903±101.416、p<0.001)は和食スコアが高いほど少なく、淡水利用量(45.116±7.866、p<0.001)は多くなった。
2010年から2020年のデータを用いた解析では、土地利用(β±SE; -0.116±0.027、p<0.001)、温室効果ガス排出量2007(-0.040±0.010、p<0.001)、温室効果ガス排出量2013(-0.048±0.011、p<0.001)、酸性化物質排出量(-0.280±0.064、p<0.001)、富栄養化物質排出量(-0.132±0.062、p<0.05)、水ストレスを加味した水利用量(-118.246±22.826、p<0.001)は和食スコアが高くなるほど少なくなった。この解析では環境指標に影響を与えるエネルギー供給量と緯度を統計学的に揃えて比較している。
日本人の伝統的な食事パターンが、淡水利用量を除く5種類の環境指標を低減させることから、和食が世界規模でSDGs達成に貢献する可能性がある。
・温室効果ガス排出量2007または2013は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)2007年評価または2013年評価による温室効果ガス(GHG)排出量のこと。
・水ストレスを加味した水利用量は、食料生産のための取水による水不足など淡水資源量全体に与える影響を加味した水量のこと。
*この研究は名古屋学芸大学健康・栄養研究所との共同研究です。
今井具子(同志社女子大学大学院 生活科学研究科、名古屋学芸大学健康・栄養研究所)
宮本恵子(名古屋学芸大学 看護学部 看護学科)
瀬崎彩也子(国立がん研究センター)
川瀬文哉(名古屋学芸大学大学院 栄養科学研究科、JA愛知厚生連 足助病院 栄養管理室)
白井禎朗(KDDI総合研究所 ライフサイエンス研究所 行動変容グループ)
阿部稚里(三重短期大学 食物栄養学科)
眞田正世(平成医療短期大学 看護学科)
位田文香(浜松医科大学医学部附属病院 栄養部)
杉原規恵(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部 栄養学科)
本多利枝(名古屋学芸大学 看護学部 看護学科)
炭竈優太(日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院 医療技術部栄養課)
野坂咲耶(同志社女子大学大学院 生活科学研究科)
下方浩史(名古屋学芸大学大学院 栄養科学研究科)
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