プレスリリース
大阪工業大学(学長:井上晋)応用化学科分子認識化学領域の平原将也准教授のグループが、次世代の抗がん剤と期待されるルテニウム錯体において、低濃度でがん細胞を死滅させる効果があり、光を当てると更に高い効果を得られる錯体の開発に成功しました。
【本件のポイント】
●次世代の抗がん剤として注目されるルテニウム錯体の、低濃度で作用する錯体を開発
●光を照射することで、がん細胞を死滅させる効果が更にアップ
がんの化学療法では、金属イオンと有機化合物を結合させた「金属錯体」由来の抗がん剤が用いられています。現在、主流となっているのは白金錯体「シスプラチン」で、がん細胞の死滅に高い効果を発揮するものの、脱毛や吐き気などの副作用が大きいことや、耐性ができることが課題となっています。次世代の抗がん剤として注目されているのがルテニウム錯体です。光照射によってがん細胞を死滅する効果が増加することが知られていますが、効果を得るには1mg/l程度の濃度が必要で、副作用を抑えるためには低濃度で作用するものが求められてきました。本研究では、ピラゾールを結合させたルテニウム錯体についてがん細胞を死滅させる効果を調べました。暗所下でも従来に比べて低濃度の0.29mg/lで作用することが分かりました。光を照射するとピラゾールが解離することで、がん細胞を死滅させる効果が高まり(図(a))、更に低濃度の0.04mg/lでも作用することが確認できました(図(b))。
抗がん剤の用量を低濃度に抑えたうえ、病巣を狙って光を当てることで治療効果を上げることが期待できます。
本研究で合成した金属錯体は従来の複雑な分子設計を必要とする金属錯体と比較して極めてシンプルな構造です。今後の合成や調査により、更に効果の高い抗がん剤が開発されることが期待できます。
本成果は日本学術振興会科学研究費補助金基盤研究(B)及び基盤研究(C)の支援を受け、防衛大学校応用科学群応用化学科上北尚正准教授との共同研究により得られました。米国化学会の学術雑誌Inorganic Chemistryに論文が掲載(2024年1月12日付)され注目を集めています。
URL: https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/acs.inorgchem.3c03716
(DOI:10.1021/acs.inorgchem.3c03716)
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【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/