プレスリリース
シュローダー(本社:英国 ロンドン)は、世界の機関投資家の見通しや懸念、投資意識を把握することを目的に「シュローダー機関投資家調査2023」を実施し、サステナビリティ、プライベート・アセットなどに関する調査結果を発表しました。本調査は、770の機関投資家を対象に、2023年5月から6月にかけて実施しました。対象とする機関投資家の運用資産総額は約34兆7,000億米ドルにのぼります。
本調査では、半数以上の機関投資家が、引き続き地政学的不確実性やインフレの影響を懸念していることが明らかになりました。
2022年の調査では、サステナビリティ投資を行う上で望ましいアプローチとして、ESGインテグレーションを挙げる投資家の割合が最も高かったものの(75%)、本調査では、世界の機関投資家はテーマ型投資(61%)やインパクト投資(59%)を選好する傾向が示されています。もはやESGインテグレーションは当たり前のものになり、より焦点を絞った投資機会が注目されていることがうかがえます。
また、世界の機関投資家はネット・ゼロへの移行が大きな機会をもたらすと考えているようです。世界の機関投資家のうち3分の2以上(67%)は、エネルギー転換が技術革新への投資を促し、大きな投資機会を生み出す可能性が高い、または非常に高いと考えています。機関投資家の約3分の2は、プライベート・アセットが、さらなる分散投資につながることに加え、エネルギー転換やインパクト投資などのトレンドの恩恵を受ける最良の機会と考えています。
<調査結果概要>
地政学リスクとインフレに対する懸念が続く
ポートフォリオのパフォーマンスに大きな影響を与える要因を尋ねたところ、半数以上の機関投資家は、今後12ヵ月間において、地政学的不確実性(55%)とインフレ率上昇(53%)が大きな影響を与えると想定していることがわかりました。どちらも昨年調査時と比較して、要因として挙げる投資家の割合は低下したものの、依然として深刻な懸念事項であることが明らかになりました。
図1:今後12カ月のパフォーマンスに大きな影響を与えると考える要因(上位3要因)
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※5 段階評価(1=まったく影響なし〜5=重大な影響)で回答を得たうち、4 と5 の合計。*は過去の質問には含まれません。
脱炭素化、人口動態の変化、脱グローバル化といった、新たな市場環境を読み解く鍵となるトレンドが、どれもインフレ上昇圧力となることを考えると、これは驚くべきことはありません。さらに、こうしたマクロテーマは、投資家がポートフォリオの資産配分を変更する要因にもなっているようです。
例えば、脱グローバル化の流れが世界経済や資産配分に与える影響についての考えを尋ねたところ、世界の機関投資家のうち半数以上(52%)が、より地域に特化したサプライチェーンを持つ企業への投資を志向することがわかりました。
また、脱グローバル化のシナリオにおいて、今後2、3年間で最も優れた投資機会を提供すると考えられる資産クラスを尋ねたところ、先進国株式(32%)とインフラ/再生可能エネルギー(24%)が最も優れた投資機会を提供するとみられていることが示されました。
エネルギー転換における投資機会をとらえるのはインフラ/再生可能エネルギー投資
今回の調査では、機関投資家はネット・ゼロへの移行が大きな機会をもたらすと考えていることがわかりました。世界の機関投資家のうち3分の2以上(67%)が、エネルギー転換が技術革新への投資を促し、大きな投資機会を生み出す可能性が高い、または非常に高いと考えています。
また、世界の投資家の約半数(46%)は、インフラ/再生可能エネルギーが脱炭素化やエネルギー転換のトレンドがもたらす投資機会を捉えるのに最も適していると考えています。世界の投資家のうち42%が今後12ヵ月間にインフラへの資産配分を増やす予定と回答しました。
図2:脱炭素化のシナリオで、今後2、3年間で最も優れた投資機会を提供すると考えられる資産クラス
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また、世界の機関投資家の半数以上が、プライベート・アセット投資を通じて、技術革新(54%)やエネルギー転換(53%)がもたらす投資機会をとらえることを目指しています。
サステナブル投資はインテグレーションから次の段階へ
2022年の調査では、サステナブル投資を行う上で望ましいアプローチとして、ESGインテグレーションを挙げる投資家の割合が最も高かったものの(75%)、本調査では、世界の機関投資家はテーマ型投資やインパクト投資を選好する傾向が示されています。
図3:サステナビリティ投資を行う上で、望ましいアプローチ
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サステナビリティとインパクト戦略へ投資する理由を尋ねたところ、世界の機関投資家のうち約3分の2(64%)が、サステナブル投資は長期的な財務リターンを達成するために必要だと考えていることがわかりました。また、ポートフォリオの分散を挙げた投資家も62%にのぼりました。
サステナビリティとインパクト目標を達成するために、最も適した資産クラスについて尋ねたところ、非常に適していると回答した投資家の割合が高かったのは、インフラストラクチャー(44%)と、自然資本と生物多様性(41%)でした。世界的にサステナビリティに対する理解が深まるにつれて、自然資本への関心が着実に高まってきているようです。
図4:現在および 2 年後のサステナビリティとインパクト目標を達成するために最も適した資産クラス
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また、本調査では、世界の機関投資家にとって、インパクトの測定が重要な課題となっていることが示されました。世界の機関投資家の6割(60%)が、インパクト投資への資産配分を検討する際に最も重要視する基準として、インパクトの成果を容易に計測・理解できること、と回答しました。また、自身のESGアプローチにとって重要な課題に対してインパクトを与えられること(53%)、インパクトが自身のステークホルダーに利益をもたらし得ること(53%)を挙げた投資家がともに半数を超えました。
ネット・ゼロ目標達成にはより多くの支援が必要
ポートフォリオにおける温室効果ガスの排出量をネットゼロにすることにコミットしているかどうかを尋ねたところ、世界の機関投資家の約半数が、ポートフォリオ全体でネット・ゼロを達成することをすでにコミットしていることがわかりました。一方、約2割(21%)の投資家は、ポートフォリオのネット・ゼロをコミットする予定はないと回答しています。
地域別にみると、欧州・中東・アフリカ地域の機関投資家は、ネット・ゼロを達成することにコミットしている投資家の割合が最も多く、39%の投資家は中間目標を含む戦略を実行しています。一方で、ポートフォリオのネットゼロをコミットする予定がない投資家の割合が最も多いのは北米でした(39%)。
図5:ポートフォリオにおける温室効果ガスの排出量をネットゼロにすることにコミットしているか
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目標設定は最初のステップにすぎません。ネットゼロ目標の達成に向けてサポートが必要な領域を尋ねたところ、51%の投資家がネットゼロへの移行を測定・モニターするための支援が必要と考えていることがわかりました。この割合は、昨年調査の37%から増加しました。
また、ネットゼロへの移行過程を測定するための枠組みと方法に関するより多くの合意が必要との回答も約半数(49%)にのぼりました。目標達成には、より多くの合意が必要とされていることが明らかになりました。
シュローダーグループCIO兼運用部門共同責任者 ヨハナ・カークランドのコメント:
「市場では、引き続き、金利上昇懸念と景気後退リスクへの懸念が交錯しています。本調査から、世界の機関投資家が脱グローバル化、脱炭素化、人口動態のトレンドがもたらす投資機会を活用しようと株式への資産配分を増やす可能性があることがわかりました。高インフレと高金利が懸念される中、どのように状況を評価していくかが重要です。投機的な考えによる成長でなく、新たな評価基準が求められることになるでしょう。 」
「より幅広く見ると、ポートフォリオのパフォーマンスへの影響という観点では、本調査では、インフレ率の上昇、タカ派的な金融政策スタンス、世界の紛争、スタグフレーションなど、多くの問題に対する投資家の関心が高まっていることが分かりました。シュローダーはアクティブ運用会社として、世界のお客様に代わってこうした要因を調査・分析をしていきます。再び、正しく投資判断や分析を行い、正しい評価方法に注力する時期が訪れていると考えています。」
シュローダー サステナブル投資グローバル・ヘッド アンディ・ハワードのコメント:
「投資家がサステナビリティへのアプローチを継続的に拡大、発展させている中で、新たなトレンドがいくつか見え始めています。本調査では、機関投資家がテーマ型投資や投資が持つインパクトにますます重点を置くようになっていることが明らかになりました。このことは、お客様が以前に比べ、サステナブル投資に対して、より繊細なアプローチを取りたいと考えていることを示唆しています。インテグレーションは当然のことと考えられるようになり、より焦点を絞った投資機会を活用したいと考えるようになっています。世界が構造変化に直面し、脱グローバル化、脱炭素化、人口動態の変化が投資環境に影響を及ぼす中、サステナビリティの重要性はますます高まり、サステナブルな製品やサービスを提供する企業や投資に新たな機会が生まれています。その結果、投資家はこうした新たな投資テーマを特定し、資本を配分しようとしています。」
「サステナビリティは複雑で幅広いテーマです。また、新たなリサーチ、利用可能なデータの拡大、規制や政府の動向など、常に変化しています。こうした状況の中、立ち止まっているわけにはいきません。私たちは、着実に前進し続けるために、お客様の優先事項や期待、市場のベストプラクティスの検討を続けてまいります。」
シュローダー・キャピタル CIO ニルス・ロードのコメント:
「本調査では、投資家の確信度が低下していることが示されました。不安定で予断を許さない地政学リスクや、副作用を排除しつつインフレを抑制するという難しい課題に中央銀行が直面していることなどが背景です。投資家の警戒は当然ですが、同時にこの環境は一時的な局面ではなく、新たな時代の到来と捉えるべきだと考えています。調査結果から明らかになったのは、多くの投資家が、変化に対応しポートフォリオの回復力を高める手段として、プライベート・アセットへの関心を高めていることです。」
「プライベート・エクイティ、プライベート・レンディング、実物資産(インフラ、不動産)は、投資家が今後組み入れる可能性が最も高いと回答した資産クラスです。テーマ別では、投資家は、プライベート・アセットが、AI技術の急速な進化、進行中のエネルギー転換と脱炭素化、そして人口動態の変化によって促進される破壊と進化の持続的トレンドといったテーマに関して、プライベート・アセットを通じて直接参入できることを、投資家は認識しています。また、地域に根差したサプライチェーンを持つ企業の支援材料となる、脱グローバル化のトレンドに投資家が関心を高めることは、プライベート・アセットにとって追い風となります。」
シュローダー・インベストメント・マネジメント 機関投資家営業部長 横井誠のコメント:
「本調査から、地政学的リスクの高まり、インフレや金利の高止まり懸念等これまで以上に市場の不透明感が強く、ボラティリティの高い環境下で、機関投資家のみなさまが、新たな投資先を模索していることが示されました。」
「本調査の傾向と同様に、本邦機関投資家からもインパクト投資についてのご相談をいただいています。インパクト測定の課題を解決する方策として、運用会社が果たせる役割も大きいと考えています。」
「機関投資家のお客様の変化するニーズにおこたえできるよう、新たな戦略のご紹介や情報提供の充実など、活動を継続して参ります。」
調査結果の詳細はこちら( https://www.schroders.com/ja-jp/jp/institutional/insights/institutional-investor-study/
)をご参照ください。
【調査の概要】
シュローダーはCoreData Researchに依頼し、世界770の機関投資家に対し、マクロ経済環境に対する見方や運用状況、サステナビリティやプライベート・アセットなどに関して調査を行いました。本調査では、年金基金、保険会社、公的機関、各種財団・基金など、34 兆 7,000 億米ドルの資産を運用する770の機関投資家から回答を得ました。本調査は、2023 年 5 月から 6 月にかけて世界各地で実施されました。回答者の内訳は、北米200、欧州・中東・アフリカ345、アジア太平洋195、中南米30でした。
以上
シュローダーについて
シュローダーは、1804年創業、運用資産額で欧州最大級(約133兆円*)の独立系資産運用グループです。世界38拠点6,000名以上の従業員が連携して資産運用業を行っています。ロンドン証券取引所に上場する一方、引き続き創業家が中核株主として議決権付き株式の約半数を保有し、長期的視点で資産運用業に取り組んでいます。
*2023年6月30日現在7,261億英ポンド、1英ポンド=183.75円換算。
日本とのかかわりは古く、1870年(明治3年)、日本初の鉄道敷設のために日本政府が初めて発行した国債の主幹事を、シュローダーが務めたことにさかのぼります。1974年には東京事務所を開設し、日本における事業の本格的な第一歩を踏み出しました。幅広い資産運用サービスを提供する現在も日本株式運用を事業の中核の一つに据え、約150年前と同様、日本の未来への投資を通じて歴史を紡いでいます。
関連リンク
シュローダーの視点
https://www.schroders.com/ja-jp/jp/asset-management/insights/