プレスリリース
東京女子大学数理科学科の劉雪峰教授と新潟大学自然科学研究科大学院生の遠藤凌輝の研究グループは、計算機援用証明によりラプラス作用素の固有値に関する特定の形状最適化問題を解決しました。
「太鼓の音から太鼓の形状の何が定まるのか?」―物体が振動する時の音から物体自身の形状を推定するという逆問題はスペクトル幾何学の基礎問題として、100年以上多くの研究者を惹きつけてきました。太鼓の音(固有振動数)と太鼓の形状の関係は数学的にはラプラス作用素の固有値問題という偏微分方程式によって表現されます。ラプラス作用素の固有値と領域の形状の関係を解析するためには形状微分と呼ばれる「固有値問題の領域変数に関する微分値」の具体的な値を計算することが重要となります。20 世紀初頭から形状微分に対する理論的な解析が行われてきましたが、厳密な計算法の確立には至っていませんでした。
■概要
東京女子大学数理科学科の劉雪峰教授と新潟大学自然科学研究科大学院生の遠藤凌輝は、計算機を用いた精度保証付き数値計算法、特に固有関数の誤差評価に関する最新理論を利用し、多角形領域におけるディリクレ境界条件、非斉次ノイマン境界条件の形状微分に対する厳密計算法を確立しました。さらに、当該計算法を用いて、1950 年代にG.ポリアらによって解決された三角形領域におけるディリクレ固有値の形状最適化問題を計算機援用証明という新たな手法によって再解決し、さらに実用問題に関わる非斉次ノイマン境界条件をもつ固有値の形状最適化問題を解決することによって、数値解析手法のひとつである有限要素法の誤差定数の挙動を明らかにしました。
【本研究成果のポイント】
・過去10年に劉雪峰教授らが開発した固有値・固有関数に対する厳密数値計算の理論を用いて、これまで計算が困難だった固有値の形状微分に対する厳密計算法を確立しました。
・開発した形状微分の厳密計算法を用いて、一定の直径をもつ三角形領域の中でラプラス作用素のディリクレ第1固有値が最小となる形状の最適性をディリクレ・非斉次ノイマン境界条件のもと検証しました。
・開発された計算機援用証明は既存の理論的方法とは異なり、境界条件に依存しない解析手法を採用しています。このため、従来の理論的手法では困難であった複雑な境界条件を持つ固有値に関する形状最適化問題の解決に成功しました。
詳細はプレスリリースをご覧ください。
【お問い合わせ先】
(研究に関すること)
東京女子大学
現代教養学部 数理科学科 情報理学専攻
教授 劉雪峰
E-mail:xfliu@lab.twcu.ac.jp
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