プレスリリース
出版から400年目に寄せて -- 世界屈指の希少本『シェイクスピア戯曲全集』(ファースト・フォリオ)を学内貴重書展で学生に公開 -- 特色ある教育活動の一環として【甲南女子大学】
甲南女子大学図書館(兵庫県神戸市)では、2023年4月24日(月)〜28日(金)に館内展示室にて、貴重書特別展「あなただけのフォリオ展」を開催します。今年は、英劇作家シェイクスピアの初の戯曲集『ファースト・フォリオ』(1623年)の出版から400年目を迎えます。ファースト・フォリオは世界に約230冊現存、文学史上最も価値のある書籍とされています。日本には15部あり、その内の1部を甲南女子大学が所蔵しています。本展は、時代を超えて世界で愛されるシェイクスピアのアニバーサリーイヤーに寄せて開催。貴重書との対面を通じて知性や感性を育み、自学のアイデンティティを体感できる機会を在学生に提供します。
【本件のポイント】
●国内の大学で3大学のみが所蔵する『シェイクスピア戯曲全集』初版(ファースト・フォリオ)を題材に、在学生向けの貴重書展を開催
●本展では、初版(ファースト・フォリオ)に加えて、第2版・第3版・第4版を一挙展示。4つのフォリオが一堂に公開されるのは、国内外において希少な機会
●自学が保有する文化資産を生かした教育活動の一環。''甲南女子ならではの体験''を通して、在学生の知性・感性・アイデンティティ醸成を促進
【本件の内容】
甲南女子大学図書館では、『源氏物語』の古写本(鎌倉時代)、上方浮世絵コレクション(文化・文政期 1804〜30出版)、フランスのモード誌『ジュルナル・デ・ダム・エ・デ・モード』(1797〜1839出版)など、国内外の貴重書を収集し所蔵しています。貴重書は、学生の学びに活用されているほか、毎年秋に開催する貴重書展で一般無料公開するなど、文化資産を生かした社会貢献活動にも役立てています。
今回の貴重書特別展のテーマは、世界で最も有名かつ価値があると称される『シェイクスピア戯曲全集』です。甲南女子大学では、初版(ファースト・フォリオ)をはじめ、第2版・第3版・第4版まで、いわゆる4つのフォリオを全て所蔵しています。ファースト・フォリオが今年で出版400年目を迎えることにあわせて、本展の企画に至りました。公開の対象者は、シェイクスピアにちなんだアニーバーサリーイヤーである2023年に甲南女子大学に在籍中の全学生です。自学が保有する文化資産を生かした特色ある教育活動として取り組むとともに、コロナ禍を踏まえた「大学に来たくなるリアルなキャンパスの活性化」に寄与する取り組みとしても位置付けています。
開催期間中は、ライブラリーツアー(図書館スタッフが館内の使用方法や魅力を案内する施設見学会)で広く紹介するほか、ゼミをはじめ授業とも連携する予定です。本展では在学生が、世界的価値の高いコレクションとの対面から知性や感性を育み、''今ここでしかできない経験''を通して、甲南女子のアイデンティティを体感する機会につながることを期待しています。主催する図書館スタッフは、「ファースト・フォリオを目の前で観覧できるのは、国内・海外の例を見てもめったにない機会。さらに、4つのフォリオを一堂に観覧できるのは、''一生に1回あるかないか''のスペシャルな機会。甲南女子大生ならではの経験として、図書館での学びのひとときを楽しんでほしい」と語っています。
【開催概要】
甲南女子大学図書館 貴重書特別展「あなただけのフォリオ展」
・期間:2023年4月24日 (月) 〜 4月28日 (金)
・時間:12時30分 〜 15時00分
・場所:甲南女子大学図書館 本館4階 第1貴重書展示室
・主な展示資料
『シェイクスピア戯曲全集』初版 (ファースト・フォリオ|1623年)
『シェイクスピア戯曲全集』第2版 (セカンド・フォリオ|1632年)
『シェイクスピア戯曲全集』第3版 (サード・フォリオ|1664年)
『シェイクスピア戯曲全集』第4版 (フォース・フォリオ|1685年)
・対象:在学生・教職員 ※本展は学内者限定です。
・主催:甲南女子大学図書館
▽貴重書特別展「あなただけのフォリオ展」のご案内(※大学公式Webサイト)
https://www.konan-wu.ac.jp/institution/news/detail.php?id=3672
<参考|各貴重書の解説>
[1]『シェイクスピア戯曲全集』初版 (第1 二つ折り本 The First Folio)
シェイクスピアの没後7年を経た1623年に、同僚の役者でもあり、友人でもあったジョン・ヘミングとヘンリー・コンデルが、シェイクスピアの全ての戯曲を1冊の書物にまとめ、「本当の元の原稿に従った」とタイトルに記して出版した戯曲集が第1二つ折り本(ファースト・フォリオ)と呼ばれているこの刊本である。
売価は1ポンドで(当時、一人前の印刷職人が2週間半働いて手にする賃金に相当するほどの大金だった)、1000部ほど印刷されたが、現存するのは世界で僅か238部と言われている。それも保存状態が悪かったり、ページが欠けていたりするものが多いのだが、本学が所蔵する刊本はもとサセックス公爵所蔵のもので、いわば「由緒正しい」刊本であり、ほぼ完全な状態で保存されている。タイトルページにある肖像画も鮮明で美しく、全ページとも完全に揃っており、後世の手になる補足・補修の箇所も認められない。日本国内はもちろん、世界的に見ても極めて優れた完本だと評価されている。
巻を開くと、有名な肖像画があり、その対面ページにはその肖像画について書かれたベン・ジョンソンの詩、次にペンブルック伯とモンゴメリー伯への献辞、二人の編者による序文、シェイクスピアを賛美するベン・ジョンソンなどの詩が置かれている。その次に目次、劇団の主要な役者(真っ先にシェイクスピアの名があり、その次に座頭で、シェイクスピア劇の大半で主演したリチャード・バーベッジ、以下26名)の名が掲げられている。作品は『テンペスト』から始まって、「喜劇」14篇、「史劇」10篇、「悲劇」12篇の順に全部で36篇の戯曲が二段組で印刷されている。ただし、目次には『トロイラスとクレシダ』のタイトルが欠けている。
[2]『シェイクスピア戯曲全集』第2版 (第2 二つ折り本 The Second Folio)
第2二つ折り本(セカンド・フォリオ) はファースト・フォリオを印刷用原本としており、ファースト・フォリオの再版と言うべきもので、内容はファースト・フォリオとほぼ同じである。主な相違点は、詩人ジョン・ミルトンのシェイクスピア礼賛の詩が巻頭の序文群の中に付け加えられたことと、ファースト・フォリオの目次に欠けていた『トロイラスとクレシダ』が補われ、本文に1679ヶ所の訂正が施されていることである。現在ではその訂正の半数ほどは正しい校訂だが、後の半数は間違った訂正であるというのが定説となっている。現存が確認されているのは僅か163部ほどで、本学が所蔵するのはそのうちの1 部である。
[3]『シェイクスピア戯曲全集』第3版 (第3 二つ折り本 The Third Folio)
サード・フォリオは第一刷(1663年)と第二刷(1664年)があるが、本学所蔵本は第二刷である。この1664年版には1663年版にもファースト・フォリオとセカンド・フォリオにもなかった7編の戯曲が新たに加えられ、そのことがタイトルページに明記されているが、『ペリクリーズ』を除いて、他の6篇はシェイクスピアの作品ではない「外典」とされ、現代の全集からは省かれている。また、ファースト・フォリオとセカンド・フォリオでは右ページにあったシェイクスピアの肖像画が左ページになり、右ページはタイトルページになって、追加された戯曲の題名がタイトルページの中央に置かれている。
なお、1666年の有名なロンドンの大火によって印刷所が焼けたため、在庫していたサード・フォリオのほとんどが焼失し、ファースト・フォリオ同様、現存数が非常に少なく、セカンド・フォリオよりさらに希少価値の高い書物である。
[4]『シェイクスピア戯曲全集』第4版 (第4 二つ折り本 The Fourth Folio)
フォース・フォリオはサード・フォリオを訂正用原本として用い、 内容もサード・フォリオとほぼ同じで、肖像画も同じく左ページに配されているが、タイトルページの活字や字配りが大きく変化して、見た目の感じはかなり異なっている。 英語の変化に伴って綴りの現代化が行なわれているほかに、およそ750カ所の訂正を行ったが、それが数人の編者で別個になされたゆえに、改訂に一貫性がなく、 間違いも多ので、4種のフォリオの中では「最も粗悪なもの」と言われている。しかし書誌学があまり発達していなかった18世紀頃までは、出版年が一番新しい刊本であるこのフォース・フォリオが一番良くて正しいものと考えられたため、多くのシェイクスピア学者・研究者たちがこのフォース・フォリオを底本としていた。 このフォース・フォリオも残存数が極めて少なく、研究資料としての価値は大きい。
<関連URL>
▽貴重書ギャラリー(※学園公式Webサイト)
https://gakuen.konan-wu.ac.jp/gallery/rarebook/
▽甲南女子大学図書館(※大学公式Webサイト)
https://www.konan-wu.ac.jp/institution/library/
▼本件に関する問い合わせ先
甲南女子大学 事務局 広報課
住所:〒658-0001 兵庫県神戸市東灘区森北町6-2-23
TEL:078-413-3130
メール:koho@konan-wu.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/