プレスリリース
塩分・脂質の評価に注意を要することが明らかに
<研究の概要>
藤田医科大学臨床栄養学講座 飯塚勝美教授、国際医療センター 佐々木ひと美教授、内分泌・代謝・糖尿病内科学 鈴木敦詞教授、食養部 伊藤明美副部長らの研究グループは、すでに栄養価のわかっている食品を用いて、複数の食事記録アプリ※1の正確性について検討を行いました。この結果、いわゆるカップ麺や野菜ジュースなどについては個人や年齢に関わらず、簡便にかつ正確に測定できることが示されました。他方、病院食はさまざまな病気をお持ちの人が対象であるため、食塩や脂質をできるだけ減らす工夫がされています。そのため、病院食のように工夫を凝らした食事メニューについてはエネルギーや栄養素を過大評価してしまうことがわかりました。これらの成果により、今後、病院食に関しては食事記録アプリを用いて測定する場合、結果の解釈には注意が必要であることを明らかにしました。
本研究成果は、学術ジャーナル「Nutrients」(14巻18号)で発表され、併せてオンライン版が2022年9月11日に公開されました(Nutrients. 2022; 14(18):3754).
論文URL : https://www.mdpi.com/2072-6643/14/18/3754
<研究成果のポイント>
●食事記録アプリは、いわゆる既製品(カップラーメンや野菜ジュース)については誰でもまた初めてでも正確に測定できる優れたアプリであることが示されました。
●病院食は、食塩や脂肪を減らす工夫が施されているため、食事記録アプリによる病院食の測定では、特に脂質の測定が難しいことがわかりました。
●食事記録アプリは現在幅広く使用されており、病気の方が使うことも予想されるため、特殊な食事を評価する場合には結果の解釈に注意が必要と思われます。
<背 景>
食事量を評価できる方法には、計量法、24時間思い出し法、記録紙法、食品摂取頻度調査などがありますが、正確に測定することは困難です。食事記録アプリは機能の簡便性から多くの方に使われるようになっており魅力的な方法である反面、その正確性に関する検討はこれまであまりありませんでした。藤田医科大学病院 国際医療センターで行っている精密健診では、食品摂取頻度調査と3日間の記録紙法を用いて栄養評価を行っていますが、患者さんの労力・ご負担も大きいため、食事記録アプリを用いた栄養指導を行いたいと考えました。その一歩として、まずは食事記録アプリの正確性を2種類の異なる食事(コンビニ食、病院食)に対して検討を行いました。
<研究手法・研究成果>
あらかじめ、エネルギー量及び3大栄養素の含有量のわかっている食事を2種類用意しました。一つは、若い方がコンビニで昼に買う食事を想定して、カップラーメン+野菜ジュース(コンビニ食)、もう一つは病院で提供される常食(病院食)です。これらの食事に対して、日本でシェアの高い2種類の食事記録アプリ(あすけん、カロミル)を用いて、18名の方に5日間(合計5回)計測を行いました。その結果、コンビニ食では2つの食事記録アプリとも初めての方でも、個人や年齢によらず、簡便かつ正確に栄養価を評価できることがわかりました。他方、病院食ではエネルギー量を含め、栄養価を過大評価することがわかりました。栄養素の中では、塩分や脂質の評価が難しいこともわかりました。
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<今後の展開>
今回の検討を通じて食事記録アプリの簡便性・正確性が示された反面、特殊な食事(病院食)の場合には結果の解釈に注意が必要とわかりました。脂質、塩分、砂糖は見た目では含有量の評価は難しいので、食事記録アプリと血液や尿などのバイオマーカーとを組み合わせた栄養評価法を開発していきたいと思います。
<用語解説>
※1 食事記録アプリ:食事の写真による画像解析や食品名の入力により、1回分の食事内容の栄養価を推定してくれる、携帯にインストールできる解析ソフト。
<文献情報>
論文タイトル
Nutritional Assessment of Hospital Meals by Food-Recording Applications
著 者
飯塚勝美 1,石原拓磨 2, 渡邉麻由佳 4, 伊藤明美 4, 皿井正義 3, 宮原良二 3, 鈴木敦詞 5, 才藤栄一 6 佐々木ひと美 3
所 属
1藤田医科大学医学部臨床栄養学、2岐阜大学医学部附属病院先端医療・臨床研究推進センター、3藤田医科大学病院国際医療センター、4藤田医科大学病院食養部、5藤田医科大学医学部内分泌・代謝・糖尿病内科学、6藤田医科大学
本件に関するお問合わせ先
学校法人 藤田学園 広報部 TEL:0562-93-2868 e-mail:koho-pr@fujita-hu.ac.jp