• トップ
  • リリース
  • 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症度と予後を予測する新規血清バイオマーカーを発見 診断時血清HO-1高濃度例が重症化

プレスリリース

  • 記事画像1
  • 記事画像2
  • 記事画像3

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症度と予後を予測する新規血清バイオマーカーを発見 診断時血清HO-1高濃度例が重症化

(Digital PR Platform) 2022年09月01日(木)14時00分配信 Digital PR Platform

 横浜市立大学大学院医学研究科 呼吸器病学教室の原 悠講師ならびに神奈川県立がんセンター 築地 淳感染制御室室長らの研究グループは、COVID-19における血清ヘムオキシゲナーゼ-1(Heme oxygenase-1:HO-1)濃度が、重症度と生命予後予測の指標となることを発見しました。 
 本研究では、HO-1がCOVID-19の生命予後の予測性能において、有用性が期待されている可溶性CD163(sCD163)よりも上まわることを発見しました。また、血清HO-1のCOVID-19診療現場における実用化について、大いに期待されることを証明しました。
 本研究成果は、英文誌「PLOS ONE」に掲載されました。(2022年8月24日オンライン)

研究成果のポイント

COVID-19診断時の血清HO-1濃度の測定により、正確な重症度評価が可能である。
COVID-19診断時の血清HO-1濃度の測定により、ICU入室や人工呼吸器装着などの重症化予測が可能である。
血清HO-1濃度は簡易的に反復測定が可能で、COVID-19患者の重症度と生命予後予測を短時間のうちに適切に評価できるため、診療の現場での実用化が大いに期待される。




[画像1]https://user.pr-automation.jp/simg/1706/62412/500_333_20220830104234630d6b0a80ce3.jpg

図1:COVID-19重症度別の血清HO-1濃度 重症度が高い症例ほどHO-1は高値を示す



[画像2]https://user.pr-automation.jp/simg/1706/62412/450_454_20220830104238630d6b0e63510.jpg

図2:血清HO-1のICU入室予測性能(赤線:血清HO-1、青線:血清sCD163)
血清HO-1はICU入室予測能に優れている(AUC:0.82)
なお、血清HO-1は当教室で開発したELISA法にて測定している。*1

研究背景
 Macrophage Activation Syndrome(MAS:マクロファージ活性化症候群)の特徴を持つCOVID-19において、サイトカインストームは、M1マクロファージを含む炎症細胞によって引き起こされ、肺に損傷を与えます。ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)は、M2マクロファージによって産生されるストレス誘導タンパク質で、可溶性CD163(sCD163)も産生します。研究グループでは、血清HO‐1がCOVID‐19患者の重症度と生命予後予測の両方を評価するバイオマーカーになり得ると考え、M2マクロファージマーカーとされる血清HO-1とsCD163の有用性を検証しました。

研究内容
 本研究では、COVID-19で入院治療を必要とした症例における、入院時血清HO-1とsCD163の、臨床パラメーターおよび治療経過との関連性を解析しました。解析対象としたのは、64例(軽症11例、中等症38例、重症15例)です。血清HO-1は重症度に応じて有意に高値を示し(11.0 ng/mL vs. 24.3 ng/mL vs. 59.6 ng/mL)、血清LDH(R = 0.422)、CRP(R = 0.463)、高分解能CT(HRCT)におけるground glass opacity(GGO; すりガラス陰影)+ consolidation (浸潤影)score(R = 0.625)と相関しました。また、血清HO-1の重症度(0.857(HO-1) vs. 0.733(sCD163))、ICU入室(0.816 vs. 0.743)、人工呼吸器装着(0.827 vs. 0.696)における予測性能(AUC)はsCD163のそれらを上回る結果となりました。なお、血清HO-1とHRCTにおけるGGO+consolidation scoreを組み合わたICU入室(0.915)および人工呼吸器装着予測性能(0.919)は非常に良好でした。

今後の展開
 血清HO-1濃度は簡易的に反復測定が可能であり、多数のCOVID-19患者の重症度と生命予後予測を短時間のうちに適切に評価できるため、診療の現場での実用化が大いに期待されます。現在、血清HO-1の測定系は、体外診断薬メーカーと商品化に向け共同開発中です。

研究費
本研究は、横浜市立大学基礎研究費および奨学寄附金を用いて実施されました。

論文情報
タイトル:Heme Oxygenase-1 as an Important Predictor of the Severity of COVID-19
著者:Yu Hara, Jun Tsukiji, Aya Yabe, Yoshika Onishi, Haruka Hirose, Masaki Yamamoto, Makoto Kudo, Takeshi Kaneko, Toshiaki Ebina
掲載雑誌:PLOS ONE
DOI:10.1371/journal.pone.0273500

参考文献
*1
Hara Y, Shinkai M, Taguri M, Nagai K, Hashimoto S, Kaneko T. ELISA development for serum hemeoxygenase-1 and its application to patients with acute respiratory distress syndrome. Can Respir J. 2018; 2018: 9627420.





[画像3]https://user.pr-automation.jp/simg/1706/62412/400_73_20220830104718630d6c2670bb6.jpg









本件に関するお問合わせ先
横浜市立大学広報課
E-mail:koho@yokohama-cu.ac.jp

このページの先頭へ戻る