プレスリリース
金融市場の困難な環境がしばらく継続する場合においても、比較的新しい取引形態である、GP主導のセカンダリー市場は、今後も力強い成長を遂げることが予想されます。
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クリスチャン・ヴァン・デル・カム
ヘッド・オブ・セカンダリー・インベストメント、シュローダー・キャピタル
2022年の投資環境は困難なスタートとなり、投資家にいくつかの新しい課題をもたらし、また他のいくつかの課題を定着させました。投資家は、プライベート・エクイティへのエクスポージャーを維持しつつ、許容可能なリスクレベルで確実なリターンを得るために次のステップを模索しています。
当社では、プライベート・エクイティ市場全般において、多くの投資機会が生まれることを予見しています。とりわけジェネラル・パートナー(GP)主導のセカンダリー取引量は加速すると考えています。
金融市場とプライベート・エクイティへの影響
金融市場が調整されればプライベート・エクイティ市場も調整されます。市場が調整された時に顕著になる現象ですが、GPやスポンサーがポートフォリオ企業の再評価を行うタイミングにはタイムラグがあります。私たちは今、そのような環境下にいますが、あくまでバリュエーションの観点からの話であり、プライベート・エクイティの投資環境自体は何も変わっていません。プライベート・エクイティの投資環境は、金融市場全体からは、やや隔離された状態にあります。
一方で、過去のビンテージ年のパフォーマンスをみると、このような投資環境は、しばしば資金を拠出するのに良い時期であったことがわかります。市場の低迷期に資金を投入し、より魅力的なバリュエーションで企業に投資することができれば、他の条件が同じであった場合には、リターンの向上につながるはずです。
過去10 年以上にわたり、低金利環境の継続でレバレッジを割安に利用できる時期が続きましたが、今後はレバレッジの使用が割高となり、リターンの重しとなるため、過去 2 年間に見られたような、非常に優れたリターンが繰り返される蓋然性は低いかも知れません。しかし、投資環境自体はあまり変わらないため、一部のセクターでは良い結果がみられることが予想できます。特にヘルスケア関連や消費者関連セクターは、特定のビンテージ年で好調なリターンを示しているとともに、これらのセクターでは、今後さらに活発な取引が見られると思われます。
最終的には、厳しい環境下でも成長できる優良企業を妥当な評価額で購入できれば、上場株式市場を凌駕するリターンを得ることができると考えています。
セカンダリー市場の歴史的な背景
セカンダリー市場は2000年代初頭に始まり、年間取引額は10〜20億米ドル、主に短期的な流動性を確保するためのものでした。このリミテッドパートナー(LP)向けのセカンダリー市場は、大手金融機関の流動性ニーズを背景に、長年にわたり発展し、600億米ドル以上の規模となりました。さらに、LP投資家はポートフォリオを積極的に管理するための戦略的ツールとして、LPセカンダリー市場を活用してきました。
ファンドの持ち分は、アドバイザーもしくはGPを通じてLP投資家に売却されます。セカンダリー市場は興味深い市場であり、特に世界金融危機以降は人気が高まっています。ビンテージ年の話に戻りますが、市場の低迷期は、投資家が魅力的なバリュエーションでアセットを取得することができたため、LPセカンダリー取引にとっても絶好の投資時期となりました。売手は必要な流動性を得ることができ、買手は、一般的に良好な内部収益率(IRR)と安定したキャッシュフローを持つ、投資期間が短いポートフォリオを取得できるため、魅力的な取引といえます。
GP主導のセカンダリー取引の台頭
GP主導のセカンダリー取引は、広義のプライベート・エクイティにおいて、新しいタイプの取引で、スポンサーがポートフォリオ企業を売却し、古いファンドの流動性を確保する必要性から生まれたものです。
スポンサーとして、資金を調達し、3年から5年をかけて10社に投資し、ポートフォリオを構築したとします。ポートフォリオのエグジットの手法としては、IPO、戦略的バイヤーまたは他のプライベート・エクイティのスポンサーへの売却が、従来の選択肢でしたが、そこにエグジットの4つ目として、GPが新しく設定する後継ビークルに売却するという選択肢が生まれました。
単純なことのように聞こえますが、これは非常に複雑な取引であり、成功案件を「ダブルダウンする(ブラックジャックにおいて、次のカードを引いて勝てると確信する時に掛け金を倍にして勝負にでる、この案件ならば成功する可能性があると踏んで勝負に出る)」チャンスなのです。
これはポートフォリオ企業を売却するM&A取引ですが、流動性を既存のLP投資家に還元し、GPが所有・管理する継続ビークルに売却することを可能にする取引です。この取引を通じて、スポンサーは、ポートフォリオ企業の価値創造をその後何年か継続することができます。
利益相反懸念の管理
GP主導取引では、最初から最後まで管理された厳格な売却プロセスを実行する必要があります。アドバイザーは、GPが自ら価格を設定しないように、第三者機関として雇われますが、必ずしも全てのケースで有効ではありません。このような利益相反をどのように管理するかについて、非常に明確なガイドラインがあります。SECはさらに規制の強化を検討しています。
スポンサーが達成しようとしているのは、既存LP投資家に売却をさせるか、または以前の保有と同様の条件で投資を継続してもらうことです。そうすることで、多くの利益相反の可能性を取り除くことができます。重要なことは、既存の投資家が売却を強制されないことです。売却価格が低すぎると思う場合、あるいはポートフォリオ資産の価値がさらに上昇すると思う場合には、投資を継続することができます。既存投資家の観点からすると、資産の強制売却ではなく、選択肢の1つとして売却の機会が与えられるのです。
新規の投資家とは、セカンダリー投資家のことです。通常、セカンダリー投資家は、ファンドへのプライマリー投資も行っており、その資産を保有する古いファンドに投資しているLP投資家である可能性が高いです。新規の投資家にとって魅力的なのは、GPと一緒に、彼らが既に保有している優良資産に継続投資できることです。
このような資産に関する知識が、これらの取引では非常に重要です。通常LBOの場合、スポンサーは新しい資産に注目し、新しい経営陣との協働や財務デューデリジェンスなどの面で一定のリスクを負うことになります。一方でGP主導取引では、スポンサーはすでにその企業を何年も経営し、経営陣やエンドマーケットのことを熟知しているため、そういった不確実性のリスクは軽減されます。
GPは優良な資産に投資することのみを目的としているため、利益相反を管理し、公正に価格を設定し、GPと適切に連携することができれば、通常はプラスの選択バイアスが生まれます。
GP主導のセカンダリー取引において、投資家のアドバンテージとは?
重要なのは、最も魅力的なGP主導取引案件の投資機会をソーシングする能力です。当社では、コア・マネージャーから中小型市場における、最高の取引案件のソーシングが可能です。中小型市場は競争が激しく、今後もさらなる成長が予想されます。
GP主導のセカンダリー取引の市場規模は、2013年には20〜30億米ドルでしたが、昨年は700億米ドルまで近づいています。これには新型コロナ危機が大きく関係しています。多くのGPが投資先企業に目を向け、無理にエグジットを実行するのではなく、継続的なビークルで所有し、投資家のためにさらなるアップサイドを模索することを考えるようになったからです。その結果、言うまでもなくセカンダリー投資家から多くの関心が寄せられるようになりました。
GP主導取引の将来について
足もと、景気サイクルのどこにいるかは、プライベート・エクイティ市場やセカンダリー取引など、すべての市場に影響を及ぼします。現在の市場環境で取引を行う上で重要な点は、市場の低迷と経済全体の弱体化に耐えられる企業を見つけることです。
スポンサーは引き続きGP主導の取引を行っていくでしょう。当社の見解では、あらゆるプライベート・エクイティ・マネージャーが、既存のファンドの中から、1〜2件のGP主導取引を行うのではないかと予測しています。このGP主導取引という、セカンダリー市場における新しいダイナミクスは今後も変わることはないでしょう。景気後退局面では、通常みられるようなエグジット手段が難しくなるため、投資家にとって、流動性の確保の手段はより重要な課題になると考えます。
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シュローダーの視点
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