プレスリリース
多剤耐性を示すレンサ球菌の新種発見! -- Streptococcus toyakuensisと大学ドメイン名を命名 --
東京薬科大学薬学部臨床微生物学教室の中南秀将教授と名城大学薬学部微生物学研究室の輪島丈明准教授との研究チームは、愛知学院大学薬学部微生物学講座の河村好章教授との共同研究で、多種の抗菌薬に耐性(多剤耐性)を示す新種のレンサ球菌を発見しました。本菌は、本学のドメイン名である「toyaku」を冠し、Streptococcus toyakuensisと命名されました。レンサ球菌はヒトの常在菌として知られていますが、本菌は血液から分離されているため、病原性が高い可能性があります。さらに、本菌の薬剤耐性が近縁のレンサ球菌に伝播することも明らかになったため、今後の流行状況に注意が必要です。
【ポイント】
■多剤耐性を示す新種のレンサ球菌を発見しました。
■本学のドメイン名である「toyaku」を冠し、Streptococcus toyakuensisと命名しました。
■入院患者の血液から分離され、従来の方法では菌種を同定できなかったことから発見に至りました。
【概 要】
近年、抗菌薬に抵抗性を示す薬剤耐性菌の出現が問題となっています。薬剤耐性菌は、病原菌だけでなく常在菌にも出現しています。ヒトの常在菌の代表例として、口腔内レンサ球菌が知られています。口腔内レンサ球菌はStreptococcus属に属し、α-Streptococci(α溶血性レンサ球菌)またはviridans streptococci(緑色レンサ球菌)とも呼ばれます。α溶血性レンサ球菌のほとんどは、Streptococcus mitisやS. oralisのような口腔内常在菌ですが、肺炎球菌S. pneumoniaeのような呼吸器感染症や中耳炎の原因となる細菌も存在します。
私たちの研究グループは、2018年に入院患者の血液から多剤耐性のmitis groupに属するα溶血性レンサ球菌TP1632株を分離しました(図1)。従来の方法では本菌の菌種を同定できなかったことから、ゲノム解析、生化学的性状試験、系統解析を用いて本菌を解析しました。
本菌は、16S rRNA遺伝子配列の相同性解析(図2)や比較ゲノム解析(図3)で、S. mitisと最も近縁であることが分かりましたが国際的な基準で既存の菌種とは異なる新種であることを見出しました。また、生化学的性状試験の結果、S. mitisと比較し、D-Lactose、 D-Raffinose、 N-acetyl-β-glucosaminidaseの利用能が異なることが明らかになりました。本菌は本学で分離・同定されたため、本学のドメイン名である「toyaku」を冠し、Streptococcus toyakuensisと命名されました(図4)。
本菌のように、mitis groupに分類される多剤耐性α溶血性レンサ球菌は、病原性の有無に関係なく薬剤耐性遺伝子の受容菌や供与菌として働き、他の病原性細菌の耐性化に寄与することが知られています。実際、本菌の薬剤耐性も他のmitis groupに伝播することが確認されました。本菌のゲノム配列データや菌株は、世界中の研究者がアクセス可能な公共のデータベースおよび微生物分譲機関に寄託しております。
本研究成果は、本学中南秀将教授、名城大学薬学部微生物学研究室輪島丈明准教授(旧:東京薬科大学 臨床微生物学教室所属)、萩元敦也さん(東京薬科大学卒業生)、田中愛海さん(東京薬科大学大学院薬学研究科薬学専攻博士課程3年)の研究チームと、愛知学院大学薬学部 微生物学講座の河村好章教授との共同研究によって得られたものであり、英文誌Journal of Global Antimicrobial Resistanceで公開されています。
Identification and characterization of a novel multidrug-resistant streptococcus, Streptococcus toyakuenesis sp. nov., from a blood sample
Takeaki Wajima, Atsuya Hagimoto, Emi Tanaka, Yoshiaki Kawamura, Hidemasa Nakaminami
J Glob Antimicrob Resist, 29, 316-322 (2022)
DOI: https://doi.org/10.1016/j.jgar.2022.04.018
▼本件に関する問い合わせ先
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FAX:042-676-1633
メール:kouhouka@toyaku.ac.jp
【リリース発信元】 大学プレスセンター https://www.u-presscenter.jp/