プレスリリース
2022年3月28日
株式会社 東芝
東芝デジタルソリューションズ株式会社
KT Corporation
東芝グループと韓国KT、量子暗号通信の実証プロジェクトを共同で実施
〜長距離ハイブリッド量子暗号通信ネットワークにおいて、ITU標準に基づくサービス品質評価測定を世界で初めて実施、
量子産業エコシステム拡張に向けたテストベッドも予定〜
株式会社東芝(本社:東京都港区、代表執行役社長 CEO:島田 太郎、以下 東芝)、東芝デジタルソリューションズ株式会社(本社:神奈川県川崎市、取締役社長:岡田 俊輔、以下 東芝デジタルソリューションズ)とKT(本社:大韓民国ソウル特別市、代表取締役社長CEO:Hyeon-Mo Ku)は、量子暗号通信の実証実験に関する二つのプロジェクトを実施します。
東芝グループは、20年以上にわたり量子暗号通信技術の研究・開発をしており、世界1位注1の関連特許数を有しています。また、量子暗号通信の事業化に向け、日本をはじめ米国や欧州などグローバルに量子暗号通信技術の実証実験を重ねています。KTは、韓国国内の中小企業へ量子技術を移転することで、韓国の量子暗号通信のエコシステムの構築を推進しています。グローバル量子暗号通信ネットワークの国際標準承認取得数で世界1位注2の実績があり、ドローン通信、自律走行車やデータセンターなどへの応用に向けて次世代量子暗号通信サービスの創出をリードしてきました。
一つ目のプロジェクトでは、韓国ソウル特別市と釜山市間の約490kmにおいて、異機種の量子暗号通信システムをつないだ長距離ハイブリッド量子暗号通信ネットワークにおけるサービス品質測定を行います。本プロジェクトのネットワークは、これまで韓国国内で行われた量子暗号通信ネットワークの実証実験では最長注3で、韓国全土にわたって関連サービスの提供が可能になるレベルです。このネットワークは、KTが技術移転したコーウィーバー、ウリネット、アリアン製の量子暗号通信システムと、東芝デジタルソリューションズの量子暗号通信システムおよび量子鍵管理システム(Key Management System、以下 KMS)を用いて構築されています。
今回の量子暗号ネットワークのサービス品質評価に適用される評価基準は、KTが独自に開発・提案し、2022年2月に国連の専門機関であるITU-T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector:国際電気通信連合電気通信標準化部門)から世界で初めて国際標準の承認を受けたものです。異種機器で構成するハイブリッド量子暗号通信ネットワークにおいて、本評価基準で用いるパラメータに基づきサービス品質測定を実施するのは世界で初めてとなります。今回の品質測定は3月28日から4月15日まで3週間にわたり行う予定です。
二つ目のプロジェクトは、韓国内外の量子産業エコシステムの拡張を目指す、オープンな量子暗号通信サービス(QKD-as-a-Service: QKDaaS)注4のテストベッドの構築です。ソウル特別市と大田市間において、2022年夏から約2年にわたりオープンに運用し、量子技術の評価を行うとともに、量子暗号通信を活用した次世代サービスの開発支援を目的にさまざまな企業に開放します。KTと東芝グループは、そこで得た知見とユーザーフィードバックをもとにQKDaaSの改良を検討していきます。
また、ITU-TでSG13 WP1の議長を務めるKTと、ETSI(欧州電気通信標準化機構)でQKD ISG(Industry Specification Group)の議長を務める東芝グループは、QKD技術の国際標準化活動においても協力していきます。さらに、KTと東芝グループはこれまで両社が行ってきたパイロットサービスの経験を共有し、次世代の量子暗号通信サービスやビジネスモデルの開発においても協力していきます。
本プロジェクトの実施にあたり、東芝の執行役上席常務、最高デジタル責任者、および東芝デジタルソリューションズ の取締役社長 岡田俊輔は、「東芝グループは量子暗号通信の産業界への早期展開に関して、日本、米国、イギリス、シンガポールで関連業界においてパートナーシップを確立してきました。今回韓国でKTと協業することで、当社の量子暗号通信事業のグローバル拡大をより加速できると期待しています」と述べています。
KTのExecutive Vice President、および融合技術院長のKim Yi-Hanは、「今回の品質評価は、異なるメーカーの設備で構築した量子暗号通信サービスの商用化の可能性を検証するのに意義が大きい」とし、「KTは量子暗号通信にとどまらず、量子インターネットへの実装に向けた核心技術の開発のため、研究開発と投資を継続していきます」と述べています。
KTについて
KTは137年の歴史を持つ韓国最大の通信会社で、移動通信、超高速インターネット、IPTV、Cloud、企業向けソリューションなど電気通信分野で全方位的な事業領域を営んでいます。また、世界初として5G移動通信を商用化し、世界初の量子暗号通信ネットワーク国際標準を開発するなど、最新技術の世界的な市場活性化に大きく貢献しています。最近では、伝統的なTelcoからDIGICO注5への進化を宣言し、AI、ロボット、UAMなどのデジタルへの切り替えにも力を入れて取り組んでいます。
量子暗号通信(QKD)について
Quantum Key Distribution(QKD)は、安全な暗号通信プロトコルであり、2者がメッセージの暗号化と復号化に使用でき、2者だけが知りえる共有乱数鍵を生成できます。 QKDは、量子コンピューティングの攻撃に耐性があることが理論的に証明されている唯一のソリューションです。
注1 EU Joint Research Centre Technical Report, 2019, EUR29164 ENによる。
注2 国際電気通信連合(ITU)の特許データによる。
注3 2022年3月、東芝、東芝デジタルソリューションズおよびKT調べ。
注4 事業者が量子暗号通信の環境を提供し、顧客に量子暗号鍵を提供するサブスクリプション型の量子暗号通信サービス。
注5 Digital Platform Company。KTはAI、BigData、Cloudをベースに、顧客の生活の変化と他の産業の革新をリードするデジタルプラットフォーム企業を目指している。
■東芝の量子暗号通信
https://www.global.toshiba/jp/products-solutions/security-ict/qkd.html