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新型コロナ禍による各種がんの診断・切除数の減少を確認 〜がん診断が適切に実施できていない可能性を示唆〜

(Digital PR Platform) 2022年03月02日(水)10時00分配信 Digital PR Platform

 横浜市立大学附属病院 化学療法センター 堀田信之センター長らの研究グループは、全国のがん患者の7割をカバーする院内がん登録データのデータ解析を行いました。その結果、日本人で患者数の多い8がん種(食道がん・胃がん・大腸がん・直腸がん・非小細胞肺がん・乳がん・前立腺がん・子宮頚がん)について、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック(以下、「新型コロナ禍」)により診断患者数・切除患者数が大幅に減少していることを確認しました。この結果は、新型コロナ禍の影響で、がん診断が適切に実施できていない可能性を示唆しています。
 本研究成果は、英文医学誌「European Journal of Cancer」に掲載されました。(2022年2月10日オンライン)

研究成果のポイント

2020年度には、食道がん・胃がん・大腸がん・直腸がん・非小細胞肺がん・乳がん・前立腺がん・子宮頚がんの診断数と切除数が大幅に減少した。
新型コロナ禍の影響で、がん診断が適切に実施できていないと考えられる。


研究背景
 2020年に新型コロナ禍が始まり、がんの診断数が減少しているとの報告が、新型コロナ禍の影響の大きい欧米から複数報告されています。しかし、新型コロナウイルス感染症の患者数が相対的に少ない本邦における主要ながん種の診断数の変動についての解析は十分に報告されていませんでした。また、早期がんの切除は根治を目指せる重要な治療法となりますが、新型コロナ禍における切除数の減少についての報告は世界的に行われていません。

研究内容
 本研究では、全国のがん患者の7割をカバーする院内がん登録の全国集計データ*1の提供を受け解析を行いました。
 診断数の多い10種のがんを解析対象とした結果、2016〜2019年度の患者数から推定される2020年度の予想値と比べ、食道がん(9.2%)、胃がん(12.0%)、結腸がん(8.3%)、直腸がん(8.6%)、非小細胞肺がん(7.7%)、乳がん(8.1%)、前立腺がん(11.5%)、子宮頸がん(8.4%)の8がん種において診断患者数の大幅な減少を確認できました(図1)。




[画像1]https://user.pr-automation.jp/simg/1706/56304/500_219_20220228161654621c76e666a7b.jpg

図1 新型コロナ禍の影響による診断患者数の変化

また、進行がんより早期がんで診断数の減少割合が多い傾向がありました(図2)。




[画像2]https://user.pr-automation.jp/simg/1706/56304/304_219_20220228161658621c76eae5686.jpg

図2 新型コロナ禍の影響による切除診断数の変化(病期による比較)

また、食道がん(12.6%)、胃がん(14.1%)、結腸がん(9.2%)、直腸がん(9.3%)、非小細胞肺がん(10.9%)、乳がん(10.9%)、前立腺がん(12.1%)、子宮頸がん(12.0%)の切除患者数が減少したことも確認されました(図3)。




[画像3]https://user.pr-automation.jp/simg/1706/56304/500_226_20220228161702621c76ee94f9f.jpg

図3 新型コロナ禍の影響による切除患者数の変化

 新型コロナ禍の影響により10がん種合計で28,817人ががん切除の機会を失ったと推定されます。2020年度の新型コロナウイルス感染症を直接原因とする死亡数は3,492人であり、その8倍のがん患者が切除治療の機会を失ったことになります。

今後の展開
 診断患者数・切除患者数の減少は新型コロナ禍による医療機関へのアクセス悪化、健康診断中止、受診控えに起因すると考えられます。低用量胸部CT(肺がん)、便潜血(大腸がん)、パップテスト(子宮頸がん)、マンモグラフィー(乳がん)等のマススクリーニング*2は死亡リスクを減少させることが以前から知られています。感染対策がなされていることが前提ではありますが、本研究が健康診断実施・受診の促進に繋がれば良いと考えます。

論文情報
タイトル: Impact of the COVID-19 pandemic on cancer diagnosis and resection in a COVID-19 low-burden country: nationwide registration study in Japan.
著者: N Horita(堀田信之)
掲載雑誌: European Journal of Cancer
DOI: https://doi.org/10.1016/j.ejca.2022.01.027

用語説明
*1 院内がん登録の全国集計データ
出典 国立がん研究センターがん情報サービス「院内がん登録全国集計」
https://jhcr-cs.ganjoho.jp/hbcrtables/

*2 マススクリーニング
低用量胸部CT(肺がん)、便潜血(大腸がん)、パップテスト(子宮頸がん)、マンモグラフィー(乳がん)等のマススクリーニングにより受診者の死亡率を減少させることが、信頼性の高い研究で確認されており、世界各国で推奨されている。
https://uspreventiveservicestaskforce.org/uspstf/

参考
本研究は、横浜市立大学医学研究科・附属病院にて実施している「都市型地域医療を先導する病院変革人材育成」(YCU病院経営プログラム)の一環として行われました。
http://www-user.yokohama-cu.ac.jp/~hp_mgt/



[画像4]https://user.pr-automation.jp/simg/1706/56304/350_77_20220228140110621c5716d4c90.jpg









本件に関するお問合わせ先
横浜市立大学 広報課
E-mail:koho@yokohama-cu.ac.jp

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