プレスリリース
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アブダラ・ゲゾール
エマージング債券/コモディティ運用 統括責任者
2021年はエマージング債券市場にとって苦しい年となりましたが、足元では魅力度が高まっており、今後想定されるマクロ経済の向かい風に対応できる準備がすでに整っています。
世界的な流動性の引き締め、グローバル成長期待のピークアウト、収まらないインフレ圧力という三重苦は、多くの資産クラスにとって厳しい見通しをもたらしています。
しかしながら、この困難な市場環境がエマージング債券や通貨市場に与えるマイナスの影響が徐々に弱まり始めています。今年に入り先進国債券の利回りが上昇し、グローバルの株式市場が下落する展開となっていますが、エマージング債券は底堅さを見せています。
この底堅さは、しばらく続いてきたエマージング資産にとっての厳しい状況が過ぎ去ったことを意味するのでしょうか?
シュローダー・エマージング債券運用チーム(以後、当運用チーム)は、足元のエマージング債券、特に現地通貨建て債券および通貨の魅力度は高いとみています。また、外貨建て(米ドル建て)エマージング債券の一部についても魅力的な投資機会が存在しているとみています。エマージング資産は、今後の世界的な流動性引き締めとインフレ上昇による困難な市場環境を乗り切る準備が整っていると考えます。
エマージング資産は流動性引き締めのプレッシャーをすでに織り込み済みか?
世界的な金融流動性の低下は、リスク資産に大きな困難を突きつけています。
世界のマネーの実質成長率は、当運用チームによる計算によると、2020年11月の10%から2021年末時点では3.6%に減少し、昨年鈍化が始まりました。
加えて、先進国市場の中央銀行による金融引き締めサイクルは始まったばかりであることから、今後はより積極的な流動性引き締めが予想されます。
しかし、このような世界的な流動性の急速な悪化は、昨年の終わりにかけてエマージング債券の価格におおむね反映されたと考えます。また、中国は昨年末以降金融緩和を実施しているほか、グローバルに商業銀行貸出が再加速していることから、今後世界のマネーサプライが安定化する可能性もあるとみています。
経済成長の減速は一時的?
エマージング資産にとっての第二の困難は、グローバル経済回復の勢いのピークが既に過ぎた可能性があり、今後の経済成長予想が鈍化していることです(図表1参照)。確かにグローバル経済成長のモメンタムは弱まっていますが、世界の経済活動の見通しについては過度な心配は必要ないと考えます。最近のモメンタム鈍化は、新型コロナウイルスの変異株の感染拡大と世界的なサプライチェーンの混乱による一時的な影響が要因となっています。
グローバル・クレジット・インパルスの回復、堅調な労働市場、パンデミック時に蓄積された需要が、引き続き経済成長を支えると見込まれます。特にパンデミックによって経済成長の回復が妨げられた多くのエマージング国は、今後遅れを取り戻すことが期待されます。昨年のエマージング国の経済成長は米国に対して劣後しましたが、その傾向は解消されるとの期待が高まっています。
図表1: エマージング経済の成長が米国を上回ることが期待される
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インフレのピークはまだ先か?
広範なインフレの急上昇が昨年のエマージング資産にとって大きな重しとなりました。今回のインフレは一過性である可能性が高いという意見が多くみられますが、グローバルのインフレのピークはまだ見えてきていません。
コモディティ価格の上昇が継続していることから、当面はインフレ圧力が継続する可能性があります。
このようなインフレ圧力に対して、多くの現地通貨建てエマージング長期債は対応ができる状況にあるとみています。なぜなら、多くの主要エマージング国では既に金融政策の引き締めが進んでおり、利上げを継続的に実施してきたことから、これらの国の利回りは魅力的な水準に達しています。
図表2: グローバルインフレのピークはまだ先か
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米ドル建てエマージング債券はハイイールドに投資機会
米ドル建てエマージング債券においては、ハイイールド債券の平均スプレッド(米国債利回りに対する追加的な利回り)が6.45%に拡大しており(出所:JPモルガンEMBIグローバル・ダイバーシファイド・ハイイールド指数)、魅力的な投資機会を提供しています。当運用チームの長期的なバリュエーション・スコアによると、米ドル建てエマージング・ハイイールド債券セクターの魅力度が高まってきたことが示されています(図表3参照)。
図表3: 米ドル建てエマージング・ハイイールド債券セクターの一部に投資機会が存在
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ただし、米ドル建てエマージング債券の流動性は低く、また、当セクターへの資金流入は失速しつつあることには注意が必要です。
現地通貨建て債券の魅力度は高い
先進国の中央銀行がインフレ率の急上昇に対する政策対応で遅れをとっている一方で、多くのエマージング国の中央銀行は積極的な対応をとっています。ロシア、ブラジル、メキシコなどでは引き締めサイクルが既に進んでおり、これらの国々ではインフレがピークに達しつつある兆しさえも見え始めています。
チェコ、ハンガリー、ポーランドの中央銀行も、ここ数年の超緩和的な金融政策から脱却しました。これにより中東欧の債券利回りは上昇し、ドイツ国債利回りに対するスプレッドは欧州債務危機以来の高水準に達しています。
金融政策正常化の進展と魅力的な実質利回りにより、現地通貨建てエマージング債券は魅力的な投資機会を提供しています。名目および実質債券利回りの観点で、ブラジル、ロシア、メキシコ、インドネシア、南アフリカの長期債が魅力的だと考えます。
図表4: 先進国との実質利回りの乖離が現地通貨建てエマージング債券の上昇余地を示している
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コモディティ価格上昇がエマージング通貨に追い風
エマージングのコモディティ輸出国の通貨は、実質実効為替レートの割安度、安定した対外収支、堅調なコモディティ価格、金利水準(魅力的なキャリー)が支援材料になると考えます。昨年はこれらの好材料はエマージング通貨の上昇につながりませんでした。これは、米国の経済成長が他地域を上回り、米連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策の正常化を進めるとの見方が強まったことを背景に米ドルの上昇が続いたことが要因です。
米国の経済成長が他地域を上回る状況は終わりを迎えつつあるように思われます。米国では金融および財政政策によるサポートが弱まりつつある一方で、多くのエマージング国はパンデミック後の持続的な景気拡大を遂げる可能性があります。今回の金融引き締めサイクルでは、ほとんどのエマージング国の中央銀行がFRBに対して大幅に先行していることから、FRBが今後利上げを行ったとしてもエマージング通貨は底堅さを見せると考えます。
現在の世界的なインフレ環境では、コモディティ輸出国の通貨は有利なポジションにあると言えます。これらの通貨はエマージングのユニバースの中でも魅力度が高く、特にラテンアメリカに注目すべきと考えます。これらの通貨は非常に割安な水準にあることに加え、コモディティ価格の継続的な上昇も追い風となるでしょう。図表5では、コモディティ価格の高騰がまだ多くのエマージング通貨に反映されていないことが示されています。
図表5: 堅調なコモディティ価格は今後エマージング通貨の増価につながると期待される
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