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プレスリリース

一般社団法人日本臨床カンナビノイド学会

WHOによる薬用大麻の初の科学的評価:世界的な悪戦苦闘から患者への影響までのレポートの仮訳を公表

(DreamNews) 2022年08月26日(金)18時00分配信 DreamNews

日本臨床カンナビノイド学会(事務局:東京都品川区)では、WHOによる薬用大麻の初の科学的評価に関するレポートの仮訳を本日付けで学会WEBサイトにて公表しました。

●要旨
背景 -
「大麻及び大麻樹脂」は、大麻植物に由来し、ハーブ(薬草)として、伝統医学において、又は医薬品の有効成分として使用されている。1961年以降、麻薬に関する単一条約の中で最も制限の厳しいカテゴリー(等級)であるスケジュールIVに収載されている。2016年12月2日に世界保健機関(WHO)により、科学的に見直し、再スケジュールするプロセスが開始された。それは、2020年12月2日に国連麻薬委員会(CND)による遅延及び前例のない特異的な投票に提出されるまで多くの障害を乗り切り、スケジュールIVから「大麻及び大麻樹脂」を削除することができた。
デザイン/方法論/アプローチ -
WHOのスケジュール勧告、委員会の投票に至るプロセス、その後の影響を世界、国、患者・臨床医レベルで評価する。4 年間の経過を説明し、否決された勧告と採択された勧告の両方の実際的な意味を検討した。
発見 -
このプロセスは歴史的に前例のないものであり、一般に薬用大麻と科学的根拠(エビデンス)に基づくスケジュール管理の両方が、政治的に関連するものであった。手続き上の障壁が、市民社会の利害関係者の適切な関与を妨げた。勧告の採択と否決の結果、各国は医療目的の「大麻及び大麻樹脂」へのアクセスと利用可能性について、分散的で非均一なシステムを作り続けることができるようになった。

<本論文の一部抜粋>

●はじめに

WHOが大麻審査の開始を発表してからちょうど4年後の2020年12月2日(CND, 2016a, p.8; WHO, 2016c, p.7-8)、国連麻薬委員会(CND)は大麻関連9勧告のうち1つを採択し、1つは投票を要求されず、3つは否決、さらに4つは投票にかけられなかった(表1)p.2

●背景

麻薬単一条約(C61)のスケジュールIVに「大麻及び大麻樹脂」を配置したことは、いかなる種類の科学的評価によっても検証されていない p.4

「大麻及び大麻樹脂」の見直しの要請が以下の6回あった p.5
国連麻薬委員会(CND)(2009; WHO, 2016d, p.32参照)
国際麻薬統制委員会(INCB, 2014, p.93-94)
2015年WHO ECDD(WHO, 2016d, p.32)
2016 年チェコ共和国(WHO, 2016b, p.248)
2016年国際ホスピス・緩和ケア協会(Ghehioue'che and Riboulet-Zemouli, 2016)。
2018年カリブ海共同体(Antoine and Douglas, 2018)

●審査プロセス

2年にわたるECDDの審査プロセスは、バランスのとれた独立した方法で、効果的に意見、情報、科学を収集したと思われる。p.6

●勧告

ECDD勧告は、各国が合成医薬品(基本的にMarinolとSyndros)とハーブの大麻医薬品(例えば、Asmasol、Bediol、Cannador、Sativexなど)の両方の形態の医薬品に同じ制度を提供し、また薬局での調合薬やアーユルヴェーダの処方などの非専売医薬品にもスケジュールIIIの制度を適用できるようにしようとしていた p.7

●投票

非医療用途への過度な注目は、国連麻薬委員会(CND)の議論を医療目的、治療、ヘルスケアの問題から逸脱させた。p.10

●政策的な意味合い

「長く愛されてきた薬用植物」が、1964年の麻薬単一条約(C61)発効以来57年ぶりに再び正当な医療となった。一方では、WHOの他の8つの勧告が否決されたため、世界は、医療制度、医師、薬剤師、患者、伝統的治療者のために通常提供されるスケジュールの規制ガイダンスを失ったままとなった。P.11

●結論

大麻の削除スケジューリング・プロセスは、国連麻薬委員会(CND)とWHOが1946年の設立以来、初めて歴史的な誤りを認め、行動を起こし、科学的根拠に基づき、それを修正することを可能にした。p. 12

国連の投票結果がどうであれ、WHOの専門機関が大麻由来医薬品の正当性を承認したことで、世界中の医師、看護師、その他の医療専門家たちは、医学における-そして治療としての-大麻関連規制薬物(CCD)の新しい時代の到来を告げることができるようになるだろう。
p.12

詳しい全文の仮訳レポートはこちからダウンロードしてください。
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=128683






図1 大麻関連規制薬物の国際的なスケジューリング状況について、1991年及び2021年の変更前と変更後の比較、及びWHOの勧告する変更について


本学会は、大麻草およびカンナビノイドに関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。

なお、本学会が提供するすべての翻訳情報の内容は、学会としての意見表明ではありません。

<用語集>

Δ9-THC:
デルタ9−テトラヒドロカンナビノール。THCとも表記される。144種類ある大麻草の独自成分カンナビノイドのうち、最も向精神作用のある成分。いわゆるマリファナの主成分として知られている。痛みの緩和、吐き気の抑制、けいれん抑制、食欲増進、アルツハイマー病への薬効があることが知られている。

CBD:
カンナビジオール。144種類ある大麻草の独自成分カンナビノイドのうち、向精神作用のない成分で、てんかんの他に、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、神経性疼痛、統合失調症、社会不安、抑うつ、抗がん、吐き気抑制、炎症性疾患、関節リウマチ、感染症、クローン病、心血管疾患、糖尿病合併症などの治療効果を有する可能性があると報告されている。2018年6月に行われたWHO/ECDD(依存性薬物専門家委員会)の批判的審査では、純粋なCBDは国際薬物規制の対象外であると勧告された。

内因性カンナビノイド系:
内因性カンナビノイド系(ECS)は、内因性リガンド(アナンダミド、2-AG等)、それらのカンナビノイド受容体(CB1,CB2等)、および内因性カンナビノイドの形成と分解を触媒する酵素(FAAH、MAGL等)を含む脂質の複雑なネットワークである。内因性カンナビノイド系は、学習と記憶、感情処理、睡眠、体温制御、痛みの制御、炎症と免疫応答、食欲など、私たちの最も重要な身体機能の調節および制御を担っている。

2018年米国農業法による「ヘンプ」の定義:
「ヘンプ」という用語は、「大麻(学名Cannabis sativa L.)」の植物および、その植物のいずれかの部位(種子と全ての派生物、抽出物、カンナビノイド、異性体、酸、塩、異性体の塩を含む)であり、成長しているか否かにかかわらず、デルタ−9−テトラヒドロカンナビノール(delta−9 tetrahydrocannabinol)の濃度が乾燥重量ベースで0.3%以下であるもの」を指す。

日本臨床カンナビノイド学会
2015年9月に設立し、学会編著「カンナビノドの科学」(築地書館)を同時に刊行した。同年12月末には、一般社団法人化し、それ以降、毎年、春の学術セミナーと秋の学術集会の年2回の学会を開催している。2016年からは、国際カンナビノイド医療学会; International Association for Cannabinoid Medicines (IACM)の正式な日本支部となっている。2021年4月段階で、正会員(医療従事者、研究者)101名、賛助法人会員14名、 賛助個人会員27名、合計142名を有する。http://cannabis.kenkyuukai.jp/

日本の大麻取締法
我が国における大麻は、昭和5年(1930年)に施行された旧麻薬取締規則において、印度大麻草が≪麻薬≫として規制されてきた。第二次世界大戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)により印度大麻草と国内の大麻草は同一だと指摘を受け、一旦は、大麻草の栽培等の全面禁止が命じられた。ところが、当時の漁網や縄などの生活資材に必要不可欠であり、国内の農家を保護するために大麻取締法(1948年7月10日制定、法律第124号)を制定した。医師の取り扱う麻薬は、麻薬取締法(1948年7月10日制定、法律第123号)となり、農家が扱う大麻は、大麻取締法の管轄となった。その後、化学繊維の普及と生活様式の変化により、大麻繊維の需要が激減し、1950年代に3万人いた栽培者が1970年代に1000人まで激減した。欧米のヒッピー文化が流入し、マリファナ事犯が1970年代に1000人を超えると、それらを取り締まるための法律へと性格が変わった。つまり、戦後、70年間で農家保護のための法律から、マリファナ規制のための法律へと変貌した。2018年の時点で、全国作付面積11.2ha、大麻栽培者35名、大麻研究者401名。この法律では、大麻植物の花と葉が規制対象であり、茎(繊維)と種子は、取締の対象外である。栽培には、都道府県知事の免許が必要となるが、マリファナ事犯の増加傾向の中、新規の栽培免許はほとんど交付されていない。また、医療用大麻については、法律制定当初から医師が施用することも、患者が交付を受けることも両方で禁止されたままである。
現在、2021年の大麻等の薬物対策のあり方検討会の報告書が取りまとめられ、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会大麻規制規制小委員会にて改正大麻法に向けた議論が進められている。

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