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プレスリリース

一般社団法人日本臨床カンナビノイド学会

国際大麻ツールキット:大麻使用を測定するための最低基準。基準THC量の1単位=5mgを推奨

(DreamNews) 2022年01月27日(木)18時00分配信 DreamNews

専門家のコンセンサスに基づく、大麻使用量を定量化するための最低基準の枠組みに関する論文の仮訳です。日本臨床カンナビノイド学会(事務局:東京都品川区)では、本日、当学会サイトにて仮訳を公表した。

ここでは、米国国立薬物乱用研究所(NIDA)等が21年5月から大麻研究者に推奨している基準THC量の1単位=5mgを紹介しています。

THCの1単位とは、アルコール単位と同じような考え方であり、アルコールの1単位は10gです。これによって、ビール、日本酒、焼酎、ワイン、チューハイなどの飲酒量比較が容易になります。
参考:飲酒量の単位
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-02-001.html

大麻製品は、効力、化学型、種類(ハーブ、樹脂、濃縮液)、摂取方法が多岐に渡るため、目安の単位が必要とされていました。THCの最小毒性量(LOAEL)が2〜8mgというエビデンスを根拠に基準THC量の1単位を5mgとしています。実際には10mgぐらいないと効力が足りない(感じられない)と常に議論されていますが、より低リスクになることを推奨するために5mgの値が採用されています。

ちなみに、5mgのTHCは、カナダの合法化している嗜好用大麻のカテゴリーである食用大麻(エディブル)基準などの上限値の半分に相当しています。

エディブル(食用大麻):1包装当り10mg
大麻抽出物(経口):1単位(カプセル等)当りTHC10mg、1包装ごとにTHC1000mgまで
大麻抽出物(吸入):1包装ごとにTHC10mgまで
大麻外用剤(皮膚等):1包装ごとにTHC1000mgまで
注:10mg=0.01g 1000mg=1.0g

参考:カナダのリスク低減のための大麻使用ガイドライン(LRCUG)の推奨事項
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=121280

論文タイトル
国際大麻ツールキット(iCannToolkit):大麻使用を測定するための最低基準に関する学際的な専門家のコンセンサス

背景:大麻使用を測定するための国際的に合意された最低限の方法がないため、大麻使用が心理社会的、神経認知的、臨床的、公衆衛生的に及ぼす影響に関する多分野のエビデンスを統合することができない。

方法:大麻の国際的な専門家25名が集まり、多様な環境下で世界的に大麻使用を測定するための最低基準の学際的な枠組みについて議論した。

結果:専門家によるコンセンサスでは、3つの層からなる階層的な枠組みに合意した。各層(普遍的な測定法、設定に応じた測定法、生物学的測定法)は、それぞれ異なる研究の優先順位と最低基準、コスト、実施のしやすさを反映していた。妥当で正確な評価法を開発するためには、さらなる研究が必要である。

結論:提案された枠組みを研究、公衆衛生、臨床実践、医療の場で一貫して使用することで、大麻消費、関連する有害性、およびその軽減のためのアプローチに関する国際的な証拠の調和が促進されるであろう。


本学会は、大麻草およびカンナビノイドに関する専門学会ですが、国際的な薬物政策の影響が大きいテーマであるため、今後もこのような世界情勢についての有益な資料の和訳および紹介に努めていきます。なお、本学会が提供するすべての翻訳情報の内容は、学会としての意見表明ではありません。



図1 専門家のコンセンサスに基づく、大麻使用量を定量化するための最低基準の枠組み。最下層から順に、測定法は費用が高くなり、実施のしやすさは易しくなる。


国際大麻ツールキット(iCannToolkit):大麻使用を測定するための最低基準に関する学際的な専門家のコンセンサスの仮訳全文は、こちらまで
http://cannabis.kenkyuukai.jp/information/information_detail.asp?id=122285


<用語集>

Δ9-THC:
デルタ9−テトラヒドロカンナビノール。THCとも表記される。144種類ある大麻草の独自成分カンナビノイドのうち、最も向精神作用のある成分。いわゆるマリファナの主成分として知られている。痛みの緩和、吐き気の抑制、けいれん抑制、食欲増進、アルツハイマー病への薬効があることが知られている。

CBD:
カンナビジオール。144種類ある大麻草の独自成分カンナビノイドのうち、向精神作用のない成分で、てんかんの他に、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、神経性疼痛、統合失調症、社会不安、抑うつ、抗がん、吐き気抑制、炎症性疾患、関節リウマチ、感染症、クローン病、心血管疾患、糖尿病合併症などの治療効果を有する可能性があると報告されている。2018年6月に行われたWHO/ECDD(依存性薬物専門家委員会)の批判的審査では、純粋なCBDは国際薬物規制の対象外であると勧告された。

日本臨床カンナビノイド学会
2015年9月に設立し、学会編著「カンナビノドの科学」(築地書館)を同時に刊行した。同年12月末には、一般社団法人化し、それ以降、毎年、春の学術セミナーと秋の学術集会の年2回の学会を開催している。2016年からは、国際カンナビノイド医療学会; International Association for Cannabinoid Medicines (IACM)の正式な日本支部となっている。2021年4月段階で、正会員(医療従事者、研究者)101名、賛助法人会員14名、 賛助個人会員27名、合計142名を有する。http://cannabis.kenkyuukai.jp/

日本の大麻取締法
我が国における大麻は、昭和5年(1930年)に施行された旧麻薬取締規則において、印度大麻草が≪麻薬≫として規制されてきた。第二次世界大戦後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)により印度大麻草と国内の大麻草は同一だと指摘を受け、一旦は、大麻草の栽培等の全面禁止が命じられた。ところが、当時の漁網や縄などの生活資材に必要不可欠であり、国内の農家を保護するために大麻取締法(1948年7月10日制定、法律第124号)を制定した。医師の取り扱う麻薬は、麻薬取締法(1948年7月10日制定、法律第123号)となり、農家が扱う大麻は、大麻取締法の管轄となった。その後、化学繊維の普及と生活様式の変化により、大麻繊維の需要が激減し、1950年代に3万人いた栽培者が1970年代に1000人まで激減した。欧米のヒッピー文化が流入し、マリファナ事犯が1970年代に1000人を超えると、それらを取り締まるための法律へと性格が変わった。つまり、戦後、70年間で農家保護のための法律から、マリファナ規制のための法律へと変貌した。2018年の時点で、全国作付面積11.2ha、大麻栽培者35名、大麻研究者401名。この法律では、大麻植物の花と葉が規制対象であり、茎(繊維)と種子は、取締の対象外である。栽培には、都道府県知事の免許が必要となるが、マリファナ事犯の増加傾向の中、新規の栽培免許はほとんど交付されていない。また、医療用大麻については、法律制定当初から医師が施用することも、患者が交付を受けることも両方で禁止されたままである。

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