プレスリリース
大里研究所(所在地:岐阜県揖斐郡、理事長:林 幸泰)は、同研究所が開発したFPP(パパイヤ発酵食品)の研究において、イタリア・ReGenera R&D International for Aging Interventionのマロッタ教授らが、健康な中高齢者を対象としたテロメア動態におけるFPPの有効性を2年間にわたる無作為化二重盲検比較臨床試験により検証した結果を学術誌「Journal of Biological Regulators and Homeostatic Agents」に発表し、この度、日本で初めて大里研究所ホームページにて公開したことをご報告いたします。
URL: https://www.ori-japan.com/research/subject/cat26/fpp-8.html
■はじめに
FPPは、遺伝子組換えでないカリカパパイヤを原料に日本の伝統的な発酵技術を用いて作られた顆粒状の発酵食品です。FPPは、身体に侵入した細菌やウイルスに対抗する免疫機能に必要な良い活性酸素種(Good ROS)の産生を促進する作用を持つ一方で、悪い活性酸素種(Bad ROS)を除去する優れた抗酸化作用を持ち、これまでの研究から、糖尿病やがんなどの慢性疾患に対する併用療法への展開が期待されています(1)。また、免疫が低下している2型糖尿病患者のエネルギー代謝および免疫機能を改善する効果が認められたことから、2018年9月、特許第6401792号『ATP産生促進剤 及び ミトコンドリア活性促進剤 並びに免疫賦活剤』として日本国特許庁により特許登録されました(2)(3)(4)。
FPPは、感染症から身を守るための免疫機能を高めるツールとして注目を集めています。
■テロメアとテロメラーゼ
ヒトの身体は、数十兆個の細胞で出来ており、これらの細胞が分裂し新しい細胞を作ることで生命を維持しています。しかし、細胞は、分裂を繰り返すとやがてその機能が低下し、増殖が止まります。これは、染色体の末端を保護し安定性を保つ働きをするテロメアが、細胞が分裂するたびに短縮し、一定の長さより短くなると染色体の不安定化が起こるためです。この状態を“細胞老化”と言い、新たな細胞はできなくなります。つまり、テロメアの長さは、細胞の分裂回数を決める、すなわち若さを示す“命の回数券”なのです。一方、ヒトの身体は、テロメアを再生する働きを備えています。テロメラーゼという酵素が作用することで、テロメアは伸長します。
そのため、テロメアとテロメラーゼの働きは、細胞の健康寿命を伸ばすことに深い関わりがあるのです。
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(図1)テロメアと細胞分裂によるテロメア短縮
■健康な中高齢者におけるテロメア動態に対するFPPの有効性
本研究では、44-74歳の健康かつ非喫煙者107人(女性58人, 男性49人, 平均年齢56.6±13.8歳, 平均BMI値24.7±2.6)におけるテロメア動態および遺伝子発現調節の役割を担うmiRNAに対するFPPの有効性を2年間にわたり無作為化二重盲検比較臨床試験を実施しました(5)。
被験者は、FPP(9g/1日)と擬似薬を摂取するFPP群、または味の付いた糖類(9g/1日)と抗酸化物質(カテキン50mg, アントシアニン20mg, レスベラトロール200mg, ユビキノール80mg, 亜鉛5mg, シカ100mg, ビタミンE 200IU)を摂取する抗酸化物質群の2グループに分けました。両群は、摂取後1, 3, 6, 12,及び24ヶ月目に、白血球におけるテロメアの長さ、テロメア長維持に関連するTERTおよびWrap53の遺伝子発現に加えてテロメラーゼ活性の評価をしました。また、抗酸化酵素群遺伝子(SOD1、CAT、GPx1、およびhOGG1)ならびに老化プロセスとの関連が報告されている2つのmiRNA(miRNA-146aおよびmiRNA-181a)の解析を行いました。
全年齢における白血球のテロメアの長さは、FPPまたは抗酸化物質群において増加傾向に有意差は認めなかったが、60-74歳では、試験開始後6ヶ月目よりFPP群においてのみテロメア長の有意な増加を認めました(図2)。加えて、抗酸化物質群と比較し、テロメア長を維持するTERTおよびWrap53の発現量も、有意な増加を示しました(図3)。試験終了時におけるテロメラーゼ活性では、抗酸化物質群と比べ50%以上の有意な増加を認めました(図4)。
抗酸化酵素遺伝子CAT、SOD1、およびGPx1の発現量を検討したところ、両群において同レベルの増加を認めました(図5)。しかし、hOGG1、miRNA-146aおよびmiRNA-181aでは、FPP群のみ増加を示しました(図6)。また、TERTおよびWrap53の発現量増加は、GPx1、hOGG1、miRNA-146a、およびmiRNA-181a遺伝子発現と有意差を持って相関していることが明らかとなりました。これらの結果から、FPPは、高齢者において抗酸化物質では難しいテロメア長を維持する効果を有することが示唆されました。
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(図2)試験開始後2年目におけるテロメア伸長の変化(60-74歳被験者)
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(図3)2年間におけるテロメラーゼ活性関連遺伝子の変化
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(図4)試験開始後2年目における被験者のテロメラーゼ活性
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(図5)2年間におけるFPPおよび抗酸化物質による抗酸化酵素群の遺伝子発現量の変化
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(図6)1年間におけるFPPによるmiRNA-181a及びmiRNA-146aの発現量の変化
■FPPによるテロメア研究
これまでのテロメア研究では、イタリア国立衛生研究所のファイス教授らが「FPPによる若年及び高齢マウスにおけるテロメラーゼ活性およびテロメア伸長効果」について、学術誌「Antioxidants」に発表しています(6)。テロメラーゼ活性は、アンチエイジング研究において注目されていますが、がん細胞でもこの酵素が活性化されていることが知られており、腫瘍の増殖に繋がる可能性について安全性が懸念されています。そこで、ファイス教授らは、マウスにおける腫瘍抑制効果について検証し、FPPがメラノーマ増殖抑制効果を有することを報告しています(7)。これらの結果を踏まえ、FPPは、抗老化および抗腫瘍効果を併せ持つことから、テロメア伸長におけるFPPの安全性を評価し報告しています(8)。
■おわりに
ヒトにおける本研究の結果から、FPPは、抗酸化酵素群の遺伝子発現を増加させ、酸化ストレスから細胞を防御しテロメア短縮を抑制すると考えられます。加えて、テロメラーゼ活性とテロメア維持・伸長を促すことから、FPPはヒトにおける細胞寿命を長らえ老化を制御する可能性が明らかとなりました。先の研究において確認されたFPPの抗腫瘍効果からも、細胞老化により発症率が高くなるがんなどの疾病リスクを低減し、より健やかな細胞を長く維持する可能性が考えられます。今後も、大里研究所は、数々のエビデンスを持つ安全な発酵食品であるFPPの研究を進め、超高齢社会における医療費削減の実現を目指してまいります。
■引用文献
(1) Diabetes as a risk factor to cancer: functional role of fermented papaya preparation as phytonutraceutical adjunct in the treatment of diabetes and cancer: Mutat Res. 2014 Oct;768: 60-8)
(2) Is there a potential application of a fermented nutraceutical in acute respiratory illnesses? An in-vivo placebo-controlled, cross-over clinical study in different age groups of healthy subjects: J Biol Regul Homeost Agents. 2012 Apr-Jun;26(2):285-946)
(3) Does oral supplementation of a fermented papaya preparation correct respiratory burst function of innate immune cells in Type 2 diabetes mellitus patients?: Antioxid Redox Signal. 2015; 22: 339-345.
(4) May Dietary Supplementation Augment Respiratory Burst in Wound-Site Inflammatory Cells?: Antioxid Redox Signal. 2018 Feb 10;28(5):401-405
(5) Effectiveness of a Fermented Functional Food on Telomere Dynamics and miRNAs in Middle-Aged/Elderly Healthy Individuals: A 2-Year Randomized, Double-Blind, Controlled Clinical Trial: J Biol Regul Homeost Agents. 2022 Oct; 36(5):1311-1319
(6) Beneficial Effects of Fermented Papaya Preparation (FPP(R)) Supplementation on Redox Balance and Aging in a Mouse Model:Antioxidants 2020, 9(2), 144
(7) Oral Administration of Fermented Papaya (FPP(R)) Controls the Growth of a Murine Melanoma through the In Vivo Induction of a Natural Antioxidant Response.: Cancers (Basel). 2019 Jan 20;11(1).
(8) Anti-aging and anti-tumor effect of FPP(R) supplementation: European journal of translational myology, 30(1), 8905.
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