プレスリリース
兵庫県川西市に本社を置く、冨士色素株式会社の内部スタートアップ企業であるGSアライアンス株式会社の森 良平博士(工学)と井谷 弘道研究員は、負極にアルミニウム、電解質にイオン液体や深共晶溶剤系を用いたアルミニウム硫黄電池(二次電池)を開発しました。
画像1: https://www.atpress.ne.jp/releases/299849/LL_img_299849_1.jpg
ラミネート型アルミニウム硫黄二次電池
■ポイント
1. アルミニウム硫黄電池は、理論的にはリチウムイオン電池の7 - 8倍の電池容量を持っています(リチウムイオン電池:200 - 243 Wh / Kg、アルミニウム硫黄電池:1675 Wh / Kg :硫黄の理論容量として)。
2. 資源の高騰、奪い合いの懸念があるリチウムと比較して、負極に用いられているアルミニウムは地球上で最も多くリサイクルされている金属で、さらに地殻中にも資源的に豊富に存在しており、二次電池が安価になりえます。
3. リチウムと違ってアルミニウムは空気中でも安定で、化学的にも安定で毒性もなく、電解質も不安定な物質は一切使用しておらず、全ての構成材料が安全なので、リチウムイオン電池などのように爆発や燃焼したりする心配がありません。
4. イオン液体、深共晶溶媒系の電解質を用いているので、300度ぐらいまでの高温でも使用が可能な電池となります。
■開発の社会的背景
人口爆発による気候変動、森林の消滅、砂漠化、生物種の絶滅、水汚染、プラスチック汚染などの環境破壊は深刻になってきています。地球温暖化の主な原因は、メタンやCO2などの温暖化ガスの急増と言われています。ゆえに今後はエネルギーを石油などの化石燃料に依存することが難しく、EVや、風力や太陽光発電などのクリーンエネルギー用の二次電池(蓄電池)の開発に世界中の企業、大学、研究機関が開発生産に乗り出しています。しかしながら今後のEV、スマートグリッドの需要に対応していくにはどうしても二次電池のさらなる大容量化が必要となっており、現行のリチウムイオン電池と比較して、より高い電池容量を持つ革新的な二次電池の開発が強く望まれています。
GSアライアンス株式会社はこれまで、リチウム硫黄電池、リチウム過剰型正極、シリコン系負極、全固体電池などの次世代型二次電池の研究を続けています。またアルミニウム空気電池の研究も行っていました。しかしながら、アルミニウム空気電池では、その構造に由来する電解液の蒸発などによる大型化の難しさや、アルミニウムが電解液に溶解後、還元されてアルミニウム金属に戻る反応が不安定で、製品化が困難でした。
■研究の内容
本研究においては負極にアルミニウム、正極に硫黄 - 炭素複合体、電解質にイオン液体や深共晶溶媒を用いて、アルミニウム硫黄電池のラミネートセルを試作しました。現時点において、正極中の硫黄の重量に対して、通常の室温大気下、0.025Cの充放電下において初期容量約950 mAhg-1、100サイクル後には容量は約200 mAhg-1となっています。サイクル特性の向上は今後の課題です。また電圧が低く(実際に作成したラミネートセルの開回路電圧は約0.9V)、リチウムイオン電池のそれと比べると低めになり、また印加電流も低めになってしまうのが課題です。
しかしながら、電池容量は大きく、安全で、安くなり得るので、初期段階からのEV用途などへの検討は困難なものの、今後、加速的に成長すると思われる大電流を必要としないが、長時間の電力を必要とするようなセンサー、IT向けの電源などへの用途が期待できます。
国内外の研究機関や大学において、容量の少し小さいアルミニウムイオン電池、アルミニウム硫黄電池の研究開発はあるものの、早い実用化を見据えて実際のアルミニウム硫黄電池をラミネートセルまで作成し、商業的に展開を試みているのは世界初(※当社調べ)です。GSアライアンスにおいては、リチウム硫黄電池の開発も行っているので、硫黄系正極の知見はあり、アルミニウム硫黄電池へその技術を応用できたことも利点です。また当社では、電極、電解質のほとんどを自社で合成、作成していることも有利です。
今後は、サイクル特性、電池容量のさらなる向上、そしてラミネートセルの国内外へのサンプル供給を開始し、事業化を目指します。
画像2: https://www.atpress.ne.jp/releases/299849/LL_img_299849_2.jpg
アルミニウム硫黄電池の概念図
■用語説明
◆イオン液体
イオン液体とは新しい素材として注目されている新材料で、イオンのみで構成された100℃以下で液体の塩とされています。カチオンとアニオンの組み合わせで、無数の様々な物質、物性を作り出すことができるので、デザイナーソルベント、また水、有機溶剤に続く第三の液体ともいわれており、その蒸気圧の低さ、難燃性、導電性、安全性などの特徴をいかして帯電防止剤、電解液、反応溶媒、潤滑剤、難燃物質の溶解剤などとしての用途があります。
◆深共晶溶剤
深共晶溶媒(DES:Deep Eutectic Solvent)とは、「水素結合ドナー性の化合物」と「水素結合アクセプター性の化合物」を混合することでつくる室温で液体になる化合物です。水素結合ドナーとアクセプター化合物はそれぞれが室温において固体であっても、混ぜることで共晶融点降下が起こり、室温において液体状態が作り出せることができます。
イオン液体と類似の特徴を持ち蒸気圧が低く、難燃性であり、熱安定性および電気化学的安定性が高く、難燃性の物質であっても溶解することができるといった特徴を有します。反応溶媒、抽出溶媒、留媒、移動相、電解液などに用いることができます。イオン液体に比べて低コストになり、環境親和性が高く、有毒なものが少ないのも特徴です。
■会社概要
商号 : GSアライアンス株式会社(冨士色素株式会社グループ)
代表者 : 代表取締役 森 良平博士(工学)
本社所在地: 〒666-0015 兵庫県川西市小花2-22-11
事業内容 : 脱炭素、カーボンニュートラルの課題に取り組む環境、
エネルギー分野の最先端技術の研究開発(国連のスタートアップ
企業支援プログラムUNOPS GIC KOBEに2020年に採択)
URL : https://www.gsalliance.co.jp/
プレスリリース提供元:@Press